【16-13】異動命令 下
【第16章 登場人物】
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816927859538759970
【地図】ヴァナヘイム国 (16章修正)
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16817330655586386797
【世界地図】航跡の舞台※第12章 修正
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330648632991690
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総司令官・ズフタフ=アトロン大将より、異動の内示を受けた先任参謀・セラ=レイス中佐は、新たな上官について思いを巡らせていた。
――コナリイ=オーラムか。
金色の髪と白い肌――母親譲りだろうか。父親に似ても似つかないその少女の外見を、レイスは帝都で1度だけ見かけたことがある。
戦場経験のない女児に、上官としての資質を求めることなど馬鹿げている。
そもそも彼は、年齢や性別に関係なく、貴族子弟というものに期待などしない。レディ・アトロンのような存在は、
いずれにせよ、既成権力で凝り固まったアルイル陣営よりかは、新設のコナリイ陣営の方がいくぶんか
それにしても、田舎の農夫然とした老人から帝都の箱入り娘とは、上官が変わるにも程がある。
彼は己の境遇に失笑を禁じえなかった。
***
帝都ターラ郊外の森――。
「ファーディ、こっち、こっち」
少女が小声で呼びかけている。
七三分け――七分をやや掻き上げ流した黒髪に、縁なし眼鏡を掛けた青年が、困ったようにはにかむ。2
小柄な少女がハンチング帽を外すと、肩に届かない程度の淡くやわらかな金色の髪が揺れた。
彼女は、猟装のまま
「ダーモットをびっくりさせてあげましょ」
少女は、白い歯を見せて、ニッと笑った。
***
セラ=レイスと離別した翌日――ズフタフ=アトロンは、王都・中央礼拝堂前にて、旧ヴァナヘイム国の将校や為政者を引見した。
先日のノーアトゥーン郊外の戦い及び宮殿占拠の折、捕縛された者たちだ。両手を後ろで拘禁され、礼拝堂広場に力なく座り込んでいる。
【16-11】宮殿陥落
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16817330655889336157
東征軍総司令官が幕僚たちを連れて、広場の中央に進む。そのなかに紅毛の先任参謀はいない。
白髪白髭の老将が現れるや、エーミル=ベルマン等捕虜たちは、歯を
「どうしてあんなに殺したッ」
「最初から反乱軍のみならず、我らも始末する腹積もりだったのだろうッ」
「この人殺しめ」
軍人に対し「人殺し」とは……。
リア=ルーカー中将やコナン=モアナ准将等、老将軍の背後に立つ者は、思わず口元を緩めた。
あの小生意気な紅毛の若造がいたら、声を出してせせら笑ったことだろう。自信と愛嬌をないまぜた表情をくずしかけて。
しかし、帝国軍の幕僚たちは、
反乱軍とともに討伐軍も為政者も一網打尽という、セラ=レイスのやり方は、苛烈を極めた。
力任せの荒業には血も涙もあったものではなく、帝国軍将校としても、捕虜たちに同情を念がわくのを禁じ得ないのだ。
平時であれば、きらびやかだったはずのヴァナヘイム将校の軍服も、汗と泥にまみれ腐臭を放っている。
かつては、博学多識と典雅さを称賛されたベルマンも、いまや獣のようにうずくまり、
一方で、審議会を最後まで捌いていた内務省次官・ヘズ=ブラントは、背筋を正し、帝国将官へ
「……」
罵声と唾を浴びながら、アトロンは黙然と見つめていた。盛衰物語る
【作者からのお願い】
「航跡」続編――ブレギア国編の執筆を始めました。
https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533
宜しくお願い致します。
「航跡」第1部はあと少しだけ続いていきます。
金髪の美少女と黒髪眼鏡のイケメン……第2部に期待いただける方、🔖や⭐️評価をお願いいたします
👉👉👉https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758
レイスたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢
【予 告】
次回、「終」お楽しみに。
長らく「航跡」にお付き合いくださり、ありがとうございました。
次回エピローグをもって、第1部を完結とさせていただきます。
レイスとソル、2人の関係の行方をお確かめください。
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