【14-16】安逸 1
【第14章 登場人物】
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【地図】ヴァナヘイム国 (13章修正)
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帝国暦384年1月14日夕刻、正月気分もまだ抜け切れていないヴァナヘイム国王都・ノーアトゥーンに、突然の轟音が響き渡った。
地響きと爆音の発生源に視線を向けた者たちは、誰もが自らの目を疑う羽目になった。
「と、塔が……」
「に、西の塔がない……」
城郭都市の東西に並び立つ2対の塔のうち、西側の繊細で優美な姿はそこにはなかった。
黒煙と土煙を上げて、首から上の部分が崩れ落ちていたのだった。
王都では、為政者たちから民衆まで上へ下への大騒ぎになった。
その昔、帝国の駐留を許した折を含めても、ノーアトゥーンが攻撃に
その帝国大使館も2年前、アルヴァ=オーズ中将等「憂国の同胞」が襲撃し、大使および駐在武官をことごとく始末している。
【5-18】梟
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「帝国は、渓谷で抑えていたのではなかったか」
「どうして、ここまでの侵入を許した」
「いよいよ味方の防衛線は崩壊したのか」
「ヴァナヘイム随一の猛将」オーズ中将が帝国軍の圧倒的な火力の前に一敗地にまみれ、「救国の英雄」ミーミル大将は再びケルムト渓谷での穴倉生活に入った――そうした事実は、既にヴァナヘイム国民衆の間にも広まっていた。
審議会が新聞各紙にいかに圧力をかけようと、それを
もっとも、圧力をかけるべき大臣たちが、再び王都を離れ、北方諸都市へ逃げ込みはじめたのを見て、民衆は噂を確信に変えたのだった。
それでも、ミーミルは谷底に籠るだけではなく、度々外へ打って出ては、局地的な勝利を重ねていたはずだった。新聞屋どもはそれを大々的に報じてきたが、対局的な劣勢は覆しようもなかったということか。
砲撃を浴びたことで、権力者たちにならうように、下々の者たちもこの王城都市から逃げ出そうとした。
城下には、老若の女性や傷病を負った男性しか残っていないはずだったが、どこに隠れ住んでいたのか、健常そうな成人男性の姿も多数見られた。
ヴァーラスをはじめ、再び帝国の手に落ちた諸都市が、どのような末路をたどっているか――彼等はよく心得ている。
王都・ノーアトゥーンも、他の城塞都市と同じく、街の周囲をぐるりと城壁に囲まれている。城外に脱けるには、各所に
ところが、崩れた塔とは反対側――東の門は、非常時に至り早くも閉じられていた。
「開けてくれ!」
「ここから出して!」
「門番、聞こえてねーのかッ」
怒号や叫びが、固く閉じられた門扉に次々とぶつけられる。
この城門が微動だにしないことを悟るや、彼らは別の門へとこぞって足を向ける。口伝えの情報では、北東の門はまだ開いているのだという。
北東の門は、脱出を諦めきれない一部の為政者のために、閉鎖されていなかった。各城門を諦めた領民にとって、脱出を渇望する民衆にとって、門外の光景は目に毒だったのかもしれない。
彼らは一斉に、そこへ殺到した。
いくら王都の城門でも、北東のそれは東西南北の正門に比べ狭小だった。押し寄せた万余の領民を一度に通すことはかなわない。
きっかけは、老夫婦の転倒だといわれる。
つまずき転んだ者は別の者に踏まれ、それを踏んで転倒した者もまた別の者に踏まれる。
群衆雪崩が生じてしまったのである。
城下で大規模な圧死事故が生じていても、王都
「3時間待つ。返答なき場合には、ただちに砲撃を再開する」
帝国東部方面征討軍より、「講和の締結に向けて」というお題目の降伏勧告書が、ヴァナヘイム国審議会へ突きつけられたからである。
そこには、和議成立の条件として、帝国軍からの7つの要求が記されていた。
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
【4-13】舌戦 下
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816927860199588503
「塔など真っ先に標的にされる」と、かつてミーミルが指摘したことを思い出された方、🔖や⭐️評価をお願いいたします
👉👉👉https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758
レイスたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢
【予 告】
次回、「安逸 2」お楽しみに。
「とんだハッタリだ……」
「自分たちはたったの2,000……」
「王都の兵隊さんが本気できたら、ひとたまりもないですぅ……」
アシイン=ゴウラ、アレン=カムハル、ニアム=レクレナ――少尉たちは気が気ではなく、上官の背中を一斉に見やった。
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