#1


 明日、逢える?


 いいえ、私はもう死の床におりまする……そんなふうに答えるわけにもいかず、咳が治りましたら、と……


 もうきっとあなた様にお会いできる日は来ないのです……


 塩辛い涙が頬を伝い、時間がただ過ぎるのを待っております……鄙びたような畳の上のお布団の中で……ぬくいほのかな微熱の中で……


 もうお会いできないということが……むしろ諦めることが……これで良かったのだ、と……


 刻一刻、溌剌はつらつとした生命力が削がれる時間の中で、もうお会いできないこと、安堵の静かな心持ちが、静かに天井まで満たしていくようです……


 私が死にましたら……いつでもあなた様のお側におります……こうやって離れて苦しい思いをすることなく……あなた様をお護り申し上げます……


 あなた様はご存知ないのでしょう……無邪気にお過ごしになられて……私が死んだことは……どうかどなたも、あの人にお伝えになられませぬよう……


 遠くに住み、元気にしていると……そのようにお伝えくださいませ……


 きっとお忙しくされて……私のことも徐々にお忘れになるでしょう……それで良いのです……


 

 死神の枯れ草の息で……影濃く辺りを灰色にしてしまわぬよう……私が先に逝き、お護り申し上げます……


 あの人の無邪気な笑顔を守るため……守るため……。





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契り 〜 さくら @0078

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