終章
それから数日後。あたしたちは、『魔法で願いかなえますクラブ』を立ち上げた。ちゃんとした部活動じゃなくて、必要なときに活動する、あたしたちで勝手に作ったクラブ。
メンバーは、蒼太くん、陽人くん、そしてあたし。陽人くんのステッキさんと、スズさん。
え? あたしたちが魔法使いだって話しちゃいけないんじゃなかったっけって? たしかにそうなんだけど、そもそも魔法が使えるなんて言ったって、たいてい冗談だって笑われるだけだからね。
それに。残念ながら、スズさんはまだ魔法が使えないの。あれだけあの時、一人前のステッキになったって喜んでたけど。それが分かった時、陽人くんと陽人くんのステッキに大笑いされてすごく怒ってたっけ。
だから、魔法なんて名前だけ。魔法を使わなくたって、人を幸せにすることはできる。感謝の証を集めることはできる。だからあたしたちは、決めたの。
魔法を使わずに、魔法みたいに人を幸せにしていこうって。
「あ、蒼太くん。これあげる」
放課後。部活動へ向かおうとする蒼太くんにあたしは、チェックの紙袋をわたす。
「……なにこれ」
「開けてみて」
あたしがうきうきしながら言うと、蒼太くんは顔をしかめながらも袋を開けてくれる。中身を見て、蒼太くんがおどろいてるのが分かる。
「バレンタインデーの時のチョコレートは陽人くん用だったから。今日はちゃんと、蒼太くん用に作り直してきました」
バレンタインデーはとっくの昔にすぎちゃったけどね。あたしが言うと、蒼太くんはちょっとだけ照れくさそうに笑ってくれた。
「あー! プレゼントもらっちゃいけないのにー」
陽人くんが教室に入ってきて大声で言う。
「バカ、お前バレンタインデーの時、たくさん女子からもらっただろ」
「そうだっけー? 記憶にないなー」
蒼太くんと陽人くんの言い争いを、あたしはにこにこしながら見つめる。ちょっとずつだけど、蒼太くんと陽人くんの仲もよくなってきた。本当によかった。
まだまだやらなくちゃいけないことは山積みだけど、三人と二つのステッキが力を合わせれば、きっと乗り越えられる。
よーし。『魔法で願いをかなえますクラブ』、がんばっちゃうんだから!
《完》
まじかる★ステッキ 工藤 流優空 @ruku_sousaku
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