誤算が誤算を呼ぶ、異聞関ヶ原

慶長四年、秀吉と利家が世を去り、豊臣政権下での対立が表面化。
福島正則ら武断派らにより、石田三成が襲撃される事件が起こる。
だが、その襲撃が成功。三成の首が挙げられてしまった。

この史実よりやや早い一官僚の死は、豊臣家のみならず徳川家にも大きな狂いを生む。

豊臣家がそうであったように、本多正信と他の武人たちに亀裂が走る徳川家。
左近ら石田の旧臣らは宇喜多秀家と語らい機が熟するのを伺い、伊達政宗や黒田如水が上杉、島津らを取り込み、それぞれの封地より蠢動を始める。

先に続き、これぞ架空戦記というダイナミックな展開もさるところながら、史実でもあまり触れられることのない武将たちの立ち位置や因果関係も知ることのできる作品。
何より面白いのは、主人公が不在の群像劇という点。そして全員が大なり小なり思い通りに事が進まないという悲喜劇は、最後まで先を読ませることなく物語にぐいぐいと没入させてくれます。

ただ、こういう架空戦記の常ともいうべきことですが、物語の都合上、東軍勢力が『反三国志』の魏軍ばりに損な役回りをさせられることが多いので、徳川家のファンはちょっと覚悟が要りますので要注意。

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慶長動乱記