第13話 王都
グラン達一行がエグランスダンジョンを旅立つ前
王都の貧民街、下水道の管理室……
騒がしく、2名の管理人が酒飲みながら馬鹿騒ぎをしていた。
「グハハハッ、おかしすぎるぜっ~、闘技場が破壊されて、仕事が減るとかよぉ~」
「ちげぇねやぁ!、吞みながらやっても楽勝だってぇのぉ~」
闘技場がやってないと流れる物が少ない、請じて引っ掛かるような物や排水も少ないので、ゲートの開閉や掃除も少ない、結果管理者の仕事も減る。
サボって良いわけでは無いが、下水道など陰気な所に来る変わり者や監視者もいないので、やりたい放題の業種になっている。
そんなサボってる管理者のたまり場たる管理室に異変が迫りつつあった。
-ドッゴーーーーン-
ビリビリ、パラパラ…
カタカタ…
「ン?なんだぁ~酔いすぎてぇ~揺れてるのかぁ~」
「かもぉなぁ~~グハハハハッァ~~」
-グラグラ…
「おい、流石におかしぞ、見に行くぞぉ」
「ぅぃ……(面倒くさいなぁ)」
目の前に広がったのは、綺麗な煉瓦積みの地下水路が巨大な丸い物に削られた痕だった。
「あわわわわ……連絡を……」
「この状態でぇ?怒られますよ?それより呑み直しましょうよ?……」
その瞬間……
「おい!今、暗闇が光ったぞ?なんだ??」
-ブン、ポトッ
「へッ?!!、え?……ひぃ!!」
上司の首が地面に転がってを確認し管理人室に逃げようとした瞬間
-ブン、ボコォ
管理室が、巨大な鞭のような形に削り取られ、管理人は壁に打ちつけられ
血が壁に飛散する
「グホッ……、緊急警報スクロールを発動……させ…」
最早、助かる見込みは無い状態だが、最後の力を振り絞り、紐を覚束ない手で外しスクロールを発動させた。
王都に無数にある下水管理室の中でも、城壁付近にある重要とされる一室からけたまましい音が鳴り響く。
その中、黒いフードをかぶった人間らしき者2人と巨大な生物2匹が歩いて行くのであった。
『鳴らされたのは、不本意だ。一旦退くとしよう……待っておれ、裏切り者め!』
『まぁまぁ、この水路内であれば、奴らは探しきれないでしょう?こいつらを一旦小さくして、潜伏場所を考えましょう』
『それもそうじゃのう、英雄気取りの国王を殺すまでは如何なる生活も堪え忍ぼう』
『息子達の不遇も聞いている。必ず掻き集めた証拠を山ほど突きつけてやる!』
『そのためにもまずは情報を集めないとアカンのう』
『『闇に潜んででも我ら一族の汚名を返上するために!!』』
こうして、痕跡により謎の巨大生物が通った事だけがのちの騎士団のによる調査で判明、幸いに監視人は身寄りのない者であったこと、巨大生物強襲の事実が広まると騒ぎ続きの王国に更なる火種を投じることになるため、真相だけが闇に葬られた。
--------------------------------------
ところ変わり、貧民街、グランの道場……
国王への報告前に魔力と神聖力のスタミナ(MPなどの総量で無く、使うための心の余裕値)が激減しグロッキー気味のウィルが休むためにと一旦、道場に寄ったのであるが、こちらでも微笑ましい?事件が発生していた。
「おう、帰ったぜ!アリサ!!こいつを部屋まで運んでくれ!」
アリサが急いで顔を出すが、見た瞬間顔が青くなる。
「どういうこと!、ウィルの顔色が青白いんだけど?何を無理させたの!!」
凄い剣幕でグランに押し迫る。
「ちょっと、厄介事が多くてな、『スタミナ』が戻ってない。しっかり、休ませてやってくれ、話はそれからだ」
アリサは、まだ何か言いたそうであったが、黙ってうなずくとウィルを魔力で浮かすと、急いで運んで行った。
「さてと、お嬢ちゃん達?覚悟の程を聞かせて貰いたいのと、面倒くさいから阻害認識魔法のアミュレットは取ってくれよ?」
リリアとエリンにアミュレットを外すように促す。
「「調査隊の他の方々を帰還させて貰っていいですか?」」
2人揃って、思うことは同じであり声を揃えて返答した。
「だとよ、アランには一報入れておくし、逃げも隠れもしないから安心してくれ!!それでも、残りたいなら違う処分を覚悟した方がいいぜ?」
監査役や運搬に携わった面々に対して、グランは悪い笑みを浮かべながら脅しに入る。
「なんとなく、察したが…連絡だけは目の前でしてくれ。我らにも立場がある」
「了解した。アラン直通の通信魔石をつかうとしよう」
小さい箱に丸い筒が二つ付いた魔道具に小さい魔石をセットし、蓋を閉めパキッと
魔石が割れる音がすると魔道具がかすかに光り始めた。
「アランか?王都へは帰還したが、色々と問題が有ってな道場に帰還している監査役もそちらに帰すから頼むわ!逃げはしないから大丈夫だ、心配なら来ればいいだろ?じゃあな!」
プツッ、シューン……
魔道具が停止した。
そして、監査役がフリーズしている…
「やっぱ、旧式は時間持たないなぁ……」
「そんな問題ではないような……まぁいいでしょう、アラン様は多分来られるでしょうから我らは引き上げるとします」
もう何か悟ったように引き上げていくのであった…
そして暫くしたのち
「さて、リリアとエリンだっけか?お前達の父は俺らが政敵なのは知ってるな?それでもここで学ぶか?」
グランはダンジョンでも問うたが、最終確認といったところであろう。
「「勿論です、これ以上あの女狐にウィルは任せません!!」」
「「家のことは関係有りません、あんな小物の父なんて……」」
なぜかここでも双子のように思考と言動が被ってしまう。
その宣言をした直後、髪の毛を逆出させたアリサが戻ってくる。
「最初から怪しいと思っていたけど、貴女達がどうして居るのかしら!!」
認識阻害が切れたため、昔の恋敵で、父の政敵の娘達が居たことでかなり怒り気味である…
「あなたの父様に、修行に誘われたのよ!私達が居ない間に何、ウィルの奥様面してるわけ??」
エリンがブチ切れ全開で絡みに行く。
リリアも負けず劣らずに……
「私達が遠方の魔法学院で学んでる時にこんなうらや…じゃなくて距離を詰めるなんて聞いてない!!」
「ははっ!2人が魔法大国に技術を学びに行ってる間に色々とあったからしかないでしょう?自分らの親を恨みなさいよ!!」
2人の親(チェスカー、エジンバニア家)は、早くに戦争の気配を察知し、友好国の魔法学院に留学させていたのだ。
「「ともかく、これからは昔のように行くからね。覚悟しなさい」」
「ふん!今から来ても変わらないわよ!!」
しばらくこの言い争いは続くようである……
うたかたのせかい 岩鳶。 @tobby
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。うたかたのせかいの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます