第12話 閑話休題ではなく、地味な作業

 空間が凍り付くほどの冷気を纏ったウィル渾身の一撃は隻眼の古赤龍を一刀両断にした。

 左右に分かれ大きな音を立て地面に着地した。真っ二つ……

 悠久の時を超えてきたであろう、古龍の最後であった。

 大きな躯体が地響きを上げ、辺りが強い揺れに見舞われ、やたら神々しい派手な霧が散った後にが刀身や束まで赤いグレートソードと宝箱が残されていた。


「ふぅ、何とかなったね。ドロップ品はグランさん、アイテムボックスに……イタッ」


 その瞬間、グランのデカい拳が脳天に落ちる。


「何とかなったじゃねぇぞ!あれほど大型には単騎で当たるなと言っただろう!!」


 グランの怒声がダンジョン内に響く。


「死んでからじゃ遅いんだぞ!!…………ボソッ…俺の準備が無駄になったじゃねぇか……」


ん?痛みを辛抱して聞いてるとんでもない事言ってるな⁇

グランの全身をくまなく見るとこれまた、いつでも闘気を放出して、古赤龍を瞬殺出来そうなレベルの闘気のゆらぎが見える……


「そんなに闘気高めて何するつもりさ!!拳のおろし場所が無いからって当たらないでよ!!」


どっちもどっちである…


「ツギハユズレヨ?」


 ニコニコしながらも弟子のウィルに圧を掛けるのであった。


 古赤龍の宝物をマジックバックにしまい、グラン達は切り出しの準備を始めた。

 そのうち、監視人やリリアやエリン達も目を覚まし始める。


「「アレ?ドラゴンがいない?!」」


 明らかな異常事態ではあったが、ふたりが鼻歌交じりに石材切り出しの準備を

してる様を見て、気絶させられた者達は何となく事情を察した。

 そこにわざとらしく、声を張り上げ、グラン達が喋る。


「さて、サッサとやっちまうぞ!ウィルッ!!!」

「了解、流石にもう大物居ないからやりますか〜」

 

 ウィルの一言により微妙な空気が渦巻く中、作業が開始される。

 本来なら1週間は石の切り出しに掛かるのであるが、まるで豆腐を切るかのように凄い速度で簡単に進めていく。


「サイズは指定があるかな?監視員さん⁇」


 グランが監視員達に声を掛ける。


「出来れば闘技場の標準サイズでお願いしたい、後で細かい加工もしたくないのでな」

「だとよ、ウィル。俺が雑破に切るから整形宜しく」

「イイけど、あまり寸法詰めないでよ?調整効かないから」


 グランと一緒に運べるレベルでの切り出しをやっていたウィルが仕上げする事になった

 といっても切り出し作業は、ほぼ完了している。

 残った切り出しと仕上げに分担して超高速で作業が進んでいく。

 時折、休憩を挟むが6時間程で作業は終了した。


「こんなもんかな?」

「寸法詰めすぎだよ、仕上げメッチャ大変だった」

「魔力の負荷にならんだろうが!イイ感じで効いただろ?」

「あとで拳で語り合う必要がありそうだね?」


 若干、グランとウィルがバチバチする中、石材の確認を監視員が行なっていく。


「化粧仕上げが要らないとか……寸法も加工屋より精度がイイ……ん?コレは⁇」

「あゝ、闘技場の地盤緩そうだったから基礎も作っといたよ〜」

「………アラン様から伺っていましたが、本当に罰則にならないですね。全て問題ありません」

「それでは、魔法士の方々、運搬の手筈をお願いします」

 

 魔法士の2人、リリアとエミルは切り出した石に大きなカバーを掛ける

魔力が空っぽになる勢いで魔力を練り上げ、カバーに魔法を掛ける。


「「世のことわりを司るものよ、万物のことわりを破り、その姿を変えよ!!」」


 並列詠唱を行ない、解き放つと巨大な石材がブロック一個分に圧縮された


「「コレで終了です。マジックバックで運搬して下さい。開放時にも魔力を使いますので、もう一晩休憩を所望します」」


 古赤龍の討伐から始まった石の切り出し作業だが、一旦区切り、宿泊してからの出発となった。


 翌朝、エグランスダンジョンを後にするのであった。




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