第38話 落とし所

「ふふっ、強く出たものだね」


虚勢か、否か


「最初に強く出たのはお前らだろう?」


「どの事か心当たりが多すぎて分からないな」


「だろうな」


目を見合い、緊迫した空気が広がる。


「…交渉か、脅迫か。君がしたいのはどっちなんだい、全く」


根負けした…かのような状況を作り、相手から条件を引き出そうとする。


当たり前だ、相手は条件を全く出さずに敵対的に手札だけ見せてきたのだから。


「素直に交渉に応じてくれる程、相手を生易しいものとは思ってないからな」


そもそも交渉になる時点で相手とは目的も手段も合致してない事はほぼ確定している。


「そうだな、本題に入ろう


俺はこのまま北王軍とセントスカヤを奪還し、国境まで押し戻す」


「…ふむ、いいのかい?」


「その代わり、こいつを預からせてもらう」


指した指の先に居るのは勿論、剣折れ騎士。


「!?」


まさか自分に白羽の矢が立つとは思ってなかったようだ。


「…私はどうすれば?」


「あぁ、そこで、だ」


全員がこちらを見続けている。


「オルテアは、学園に行ってもらう。お前と共に」


考えた最善の策は。


俺が北王軍と共に西をボコし、オルテアには学園に行ってもらう。


そしてそれぞれに、コイツらを分散させる。


オルテアに何かあろうとも、2人とも殺せる。


剣折れ単体ならば、確実に。


その自信があるからこそ、言える。


まぁコイツらへの信頼も多少あるが。


「…じゃあ、僕がオルテアと一緒に学園に?」


「そうだ。そうすれば、全員の目的が達成されるだろ?


勿論、学園まで安全に送り届けろ。お前は学園入学は俺の分の枠まである筈だから無理を通してその枠で入学して、学園生活を安全に送らせろ」


コイツからしたら俺がセントスカヤを奪還出来ているのか直ぐには分からないだろうし、俺からしてもオルテアが無事かどうかは分からない。


平等だ。


「…いいよ、交渉成立だ」






ー2ヶ月後ー



雨が降り、空は曇天。


雑木林の中。


まるで盗賊の様な装束をしながら、フードを被りながら、彼らは進んでいた。


奪われた、ある場所へ。


奪還せんと、彼らは進む。


その先に何が待っていようと。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

器の勇士 たまごやき @AFK15

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ