第37話 ベット

「んで、今後の予定は?」


表彰式も終わり、割り当てられたホテルの一室に集まっていた。


「当初の予定通り学園に行く、という選択肢。もしくは…」


信仰国王家の二女、オルテアが切り出す。


…そういえば、だが。この世界の殆どは苗字を先に言うらしい。つまり日本と同じ。


そんな些細な文化の共通点も、少しは負担を楽にしてくれている。


「もしくは?」


「このまま北の王国軍に追従し占領された土地を奪還するか」


「それは…いいのか?」


騎士が、口を開く。そういえば、コイツらの名前を聞いていなかったことを思い出した。


…後で聞くことにしよう。


「僕達にとっては願ってもない事だよ」


そりゃあそうだろう。お前らは何かの事情があるのだから。


…以前、彼女らのギルドカードを見たが、「西の帝国」のものだった。そう、今回侵攻してきた国の。


つまり、彼女らは何らかの理由で自分の国を裏切ったのだろう。


それについて何か咎める気にはならない。オルテアは既に知っている雰囲気を醸し出している。


「だが、此処でオルテアが活躍するのは頂けないな」


「…元々が王位継承権の諍いの末の疎開だからな」


騎士が、苦々しそうに言う。


…そんなに苦しいなら、言わなければ良いのに。律儀な奴だ。


「そうだ、ここで世界に轟く活躍をして見せたら最後、担ぎ出す奴らは出てくるんじゃないか?」


そう、問題なのがここだ。学園に入れれば外に出てくることは中々ない。


今は、その予定さえ破って国家間の戦争に介入したのだ。


「その点については、僕も分かっているさ」


「…正直、お前らの素性も、描いてる筋道も理解する気はない。


だがな、こっちにも相応の戦力と、予定があるんだ。そこは理解してくれ」


俺がこの世界で味方になるべきなのはナーシセス・オルテア、ただ1人のみ。


俺が、【器の勇士】がここに居る存在価値とは、ただその1点のみ。


西の帝国や【槍】と戦い、そう決めた。


味方も敵も分からないこの世界だ。


ならば、誰かの為に動くのも一興。それこそ、運命を賭けて。

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