【リリス編】(3)終焉

ただの風呂好きが異世界最強外伝です。

話中に出てくるヒロインの一人『リリス』に焦点を当てたストーリー。

1話と2話はネタバレとなるため後日公開します。


ただの風呂好きが異世界最強第1章【お風呂でつながる世界】を読んだ後にお読みください。

▽ ▽ ▽


 リリスの魔力は年を追うごとに強大になっていく。


 既にサキュバス族全員で束になっても叶わないほどの力を持つようにまでなっていた。


 サキュバス族は成人すると『洗礼の儀』が居住区の神殿で行われる。


 そこで一族の秘宝アーティファクト『アナウス』のお告げを聞くのである。


 お告げと言ってもアナウスに祈りを捧げ一族の発展を誓うもので、特にアナウスからの反応が有るわけではないがリリスは違った。


「「リリスよ。お前は一族の守り手としてこの武器を授ける」」


 シャキーン


 2メートルを超える禍々しくも美しいシャープな斧がいつの間にか手に握られていた。


「「デーモンアクスだ。それは主となった者の意思に反応して呼び出すことが出来る魔斧だ。しっかりと守護者としての責を果たすが良い」」


 斧にはめ込まれた青い宝玉が光っていた。


 『洗礼の儀』も無事に終わり、転移門の守護者としての日々を送っていた。

 緊急時に備えた海底神殿の見回りと守護隊の訓練。食料を確保する居住区での狩りが仕事だ。


 そんなある日、族長から大事な話があると呼び出しを受けた。


「リリスよ。ベヌス転移門の守護者として良く働いてくれておる」

「アナウス様よりお告げがあったのだ。お主の魔力をアナウス様に分け与え転移門の守りをより強固にする必要があると」

「アナウス様より、近い未来に強力な魔物が神殿を襲ってくるであろう。アナウス様の魔力とリリスの力が撃退に必要なのだとお告げがあったのだ」


「族長。サキュバス族の為なら喜んでやります。どうすれば良いでしょうか」


「一週間後、アナウス様の元へ行きお告げを聞くのだ」



▼ ▼ ▼

 時間は少し戻り、リリスの『洗練の儀』後の話である。


 族長はアナウスに儀のお礼を述べるため儀式の間にいた。


「今年も無事に儀式を終えることが出来ました。これからも我が一族をお守りください」


「「族長ザックよ」」


「アッ、アナウス様がおしゃべりになられた」


 この地に住む前から族長をやっていたザックだがアナウスの声を聞くのは始めてであった。


「「ザックよ。儀を受けた者にリリスという女がいた。その者にデーモンアクスを授けた。それをキーとし、その者の強大な魔力を使ってベヌスを統治する必要がある」」


「なっ、なんと……ベヌスに住むアルドラ様には多大なる恩がございます。感謝しても返しきれないほどでございます」


「「ザックよ。この一族がベヌスを統治することでドライアドの一族に休息を与えるのだ。ドライアドの女王は日々『緑の環』によってエネルギーを吸い続けられている。そこをリリスの魔力を代替えしてやればお互いの繁栄につながり感謝されるであろう」」


「ドリアラ様は常に大変な責務を果たしているのですね」


「「そうだ。お前たちはこの場所にリリスを連れてくることと事が起きたらリリスを『緑の環』に運んでくれれば良い」」

「「その時はリリスやドライアド族に恨まれるかもしれないが、事が住めば感謝されるであろう」」


 族長ザックの頭に黒い靄(もや)が渦巻いていた。


「アナウス サマ。 コノ ザック イノチニ カエテモ ムラビトト キョウリョクシ セイコウ サセマス」

▲ ▲ ▲

▽ ▽ ▽


 リリスは族長の指示通り儀式の間に来ていた。


「「リリスよ。そこへ横になるのだ」」


 アナウスの前にある石のベットに横になった。


 モワァァァ


 アナウスから発生した靄(もや)がリリスを包んでいく……


 靄はリリスから魔力を吸い取り濃くなっていった……


 靄の密度が高くなり悪魔のような獣のような姿の影になりアナウスに入っていったのが見えた。


「「我が力戻ったり。後は血の力で姿を取り戻すのみ」」


 そういってアナウスは飛び立って行った。


 リリスは理解した。アナウスは一族の神なんかじゃない。悪魔なのだと……


「あ……あくま……。ベヌスを守らなくては……」


 魔力の大半を失ったリリスはデーモンアクスを杖にして出口に向かう。


 バタンッ


 儀式の間の扉が勢いよく開いた。


「リリス。お前の強大な魔力があればベヌスを統治出来る。出来るんだー」

「おとなしく協力するのだ」


 族長たちはリリスの魔力があれば何でも出来る。というようなこと皆が口ずさんでいた。


 魔力の大半を失ったリリスはデーモンアクスで応戦するが、多勢に無勢であった。


「とーさん、かーさん……」


「あの2人なら邪魔をしおったから牢に閉じ込めてやったわい」


 ついにリリスが力尽き倒れてしまう。そこを族長たちは取り囲んで彼女を担ぎ転移門に向かった。


 リリスの指輪に気づいた族長がそれを取り上げた。


「残念だったな。この指輪はもう意味はなくなった。幸せな家庭ではなく一族の幸せとして贄となってくれ」


 指輪を投げ捨てられた。


 アナウスが追い出したドリアラの住む大樹はもぬけの殻となっていた。


 族長たちは『緑の環』にリリスを運び脱出した。

 紫の靄がリリスを取り囲みそれに反応するように枝が絡みついた。

 リリスを取り囲む靄が枝に憑依するようにオーラとなって纏われた


 そして緑の力を失った大樹の扉は閉じられた。


 『緑の環』に封じられたリリスは魔力を吸い取られ、その魔力がベヌスの木々を枯らし地は荒れさせ荒野にさせた。


 ベヌスは水も草も木も無くなりそれを必要としない魔物がアナウスに呼び寄せられるように繁殖した。


 神殿の祭壇にドリアラを追い詰めたアナウスは、配下のデスナイトを呼び寄せ転移門に配置した。


 そしてベヌスは荒廃した魔物の国となった。

 そんな環境でサキュバス族は生き残れるわけもなく逃げようにも転移門はデスナイトに塞がれ絶滅してしまった。


 『緑の環』によりベヌスと繋がったリリスは荒廃していく様子やサキュバス族が絶滅する様子など全てが視えていた。



……………………




──そして永い時が刻まれなぎさと出会った。

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【外伝集】ただの風呂好きが異世界最強 ~ぼくとデミちゃんが紡ぐ旅~ ひより那 @irohas1116

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