【リリス編】(2)生活
ただの風呂好きが異世界最強外伝です。
話中に出てくるヒロインの一人『リリス』に焦点を当てたストーリー。
ただの風呂好きが異世界最強第2章36話【036:緑の洗礼】を読んだ後にお読みください。
▽ ▽ ▽
「長老。俺たちに子供ができました! リリスといいます」
サキュバス族の夫婦、夫ガドルと妻ルリが長老のテントへ飛び込んだ。
「これはめんこい子供じゃのー。サキュバス族の大切な赤ん坊じゃ大事に育てるんじゃぞ」
「はい!」
▽ ▽ ▽
安住できる地を求めて旅をしているサキュバス族に、魔導師が画期的な魔法を編み出したのだ。
──サキュバスの角と翼を魔法力を利用して透明化する魔法
元々精神魔法が得意な種族と相性が悪い魔法だが、町で生活する事に夢を見ていた若者の多くが一族を離れていった。
しかし、常時透明化の魔法を発動するにはサキュバス族には難度が高く、透明化魔法がバレて民衆から酷い扱いを受けたことで、一族に戻るケースが多かった。
そういった事例が、人とサキュバス族の溝を一層に深めていった。
月日は流れ、サムゲン大森林の奥地を拠点としていたサキュバス族に転機が訪れる。
植物系の長である女王ドリアラが、サキュバス族を転移門の守護者として神殿に招きたいと言ってきたのだ。
「ベヌス転移門の守護者として神殿に来てはいただけないでしょうか」
「ドリアラ様、お言葉は大変ありがたいのですが、何故私どもの様な嫌われている種族に……」
「植物族の多いサムゲン大森林で苦労している種族がいると聞いてずっと見てきました。真面目に正しく生活している人たちを、誤解で森に閉じ込めておくなら、私たちベヌスへ渡る転移門の守護者として神殿に住んで欲しいのです」
▽ ▽ ▽
海底神殿は素晴らしい所であった。
特殊な方法でしか訪れる事が出来ず、神殿から出ることも出来ないが、祭壇にある魔方陣を守護する、守護者としての生活が始まった。
海底神殿の奥には結界が張られており、海底とは思えないような草原が広がっていた。
家を建てて町を造り村を大きくしていく…… サキュバス族にとって心の休まる安住の地となった。
平和な時間は、一族の繁栄を促し、今ある豊かさが、人から迫害された記憶を薄めていった。
その頃リリスは、学校へ通う年齢になっていた。
「おとーさん行ってくるねー」
「気を付けてなー」
「寄り道しないで真っすぐ帰ってくるのよー」
「はーい」
リリスの学校生活が始まった。サキュバス族の学校は、学問を学ぶだけでなく、精神魔法を主とした魔法や戦闘も学んでいく。
──ベヌス転移門の守護隊に入ることがサキュバス族にとって最高の栄誉であり、目指す先であった。
「リリス、また精神魔法が最下位だぞ。学問は成績が良いのにどうしたんだ」
「リリス。なんで精神魔学がそんなに出来ないのー」
「学問や身体能力はいつも1位なのに精神魔法だけはいつも最下位ね」
責められている訳ではないが、自分の中でサキュバスとして半人前なんじゃないかと悩んでいた。
「リリス。勉強はトップなんだからそんなに落ち込まなくても良いと思うよ。君にはきっと違った才能が眠っているはずだよ」
──アルケミス族ヘルメス。訳合ってここで生活している錬金術師
「ありがとうヘルメス。いっつも私を助けてくれるお姉さんみたいだね」
サキュバスの間で指輪作りが流行していた。ヘルメスが伝えた、女性にとって憧れの指輪だった。
──運命の人を見つける指輪
居住区の採掘場で採れる『ハートブルマニア鉱石』に、魔力と想いを封じながら磨いた石をヘルメスに指輪として加工してもらう。
その指輪に異性が触れると、結ばれた運命の人なら、その人の指に収まり未来永劫幸せになれると言われる。サキュバス族でも有名なおしどり夫婦が試したら、その通りになったので、特に若い女性の間で人気が爆発した。
リリスの両親であるルリが作った指輪をガドルが触れたら、指に収まったという話があり、リリスもクラスの女の子と一緒に指輪を作った。
……幸せな異性と出会い、両親のような結婚を夢見て
「私もお父さんとお母さんみたいな幸せな夫婦になれたらいいな」
「リリスちゃんならきっといい人が見つかると思うんだよなー」
「レイナも良い人が見つかるよ。 そしたらダブルデートしようよ」
女の子同士恋愛の話に華を咲かせていた。
高等学校生になると、魔法学の範囲も広がり、属性魔法、身体魔法など様々な分野の魔法学を学ぶ。
サキュバス族の特性上、精神魔法以外は殆ど使えないので、形式上の実技と知識を学ぶ。敵と対峙した時に知識として知っているのと知らないのでは大きく戦いかたが違うからだ。
サキュバス族は自身の生い立ちにより魔法適性が大きく異なる。
サキュバス同士で産んだ子、多種族とサキュバスで産んだ子、サキュバスが他の種族をサキュバスとした子など様々な子がいる。
基本は親となったサキュバスの精力量と遺伝量で子供の能力が決定するので、母親がサキュバスである以上、他種族の優位性が前面に出る事は無く精神魔法を上回る魔法やスキルを使えるようにはならない。 ……例外はあるが突出する事は無いというのが常識であった。
しかし、リリスは違った。
属性魔法学が異常に特化されていたのだ。
炎を起こせば、的となる丸太に届けば十分。着火すれば優等生というレベルが、丸太だけでなくその先の林まで焼き尽くす威力だった。
どの属性に置いても威力は凄まじく、精神魔法の実力を差し引いても主席合格…… それ以上にエリートが属する守護隊に抜擢される程であった。
守護隊に抜擢され、最高チームである『第1守護隊』に所属したリリスは、日夜仕事に励んでいた。
第1守護隊は、神殿だけでなくベヌスの警護も担当する。リリスは特にドライアド族が行う『緑の洗礼』の警護が大好きだった。
女王が緑の剣を使って、緑の力を注ぎ込む『緑の洗礼』
その儀式で溢れる出る、美しい緑の光を見ることが大好きだった。
そんな平和な日常をリリスは守護隊として過ごしていた。いつか出会う異性と愛し合うことを夢見て……
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