爬虫類の皮膚は乾いているのに濡れて見えますよね。触ってみると全然乾いているのに、誘うように淫靡なぬめりが目に映ります。この小説を読むと、死もそれと同じように当たり前の日常のくせにやたらと魅力的に見えることがあります。
おそらく一番楽しいのは死そのものよりも、死の淵をつま先で歩きながら深淵をのぞき込んでいる時のような気がします。
教祖はその遊びを楽しみ、いつか淵から転げ落ちることを心待ちにしている。記者はそれを離れたところで眺めながら、近づきたいと思いつつ、踏み出せない。
おそらく作者の方の意図とは違うと思いますが、そんな印象を抱きました。