主人公の秋崎くんが、中途で入ってきた宇佐見ちゃんの教育係になって、だんだんと思いを寄せるようになり…というお話。派手なストーリーはなく、ささやかで細やかな日常がつづられます。
秋崎くんはタイトル通り「人間観察が趣味」。といっても人間だけでなく、仕事や生活など幅広く観察していて、私のような「取扱説明書やお菓子の箱の裏面の説明書きまでついじっくり読んでしまう人種」にはその観察内容の細かさがたまりません。
読んでいくうちに、「そんなに心配しなくても…」「いや、そこは気にしないんかい!」など秋崎くんに対するツッコミが生まれ、「あれっ、いつの間にか『私が秋崎くんを観察している』…?」という事態に。その辺のメタな感覚もまたたまりません。
そのようなリアリティの中で、もどかしくも距離を縮める二人。最後の方は悶えっぱなし注意です!
目つきが悪くて、人間関係がちょっと控えめな感じのする先輩社員の秋崎
小柄で控えめさがオーラとなって見えないような、何かに恐縮しているようにも見える新入社員の宇佐美
2人の恋は観察という行為でほんのわずかに湧いてくる。
控えな様子のその裏に、彼女の人生を想像するだけの細やかさ、落ち込んでいる彼女になんて声をかけていいのかわからない、控えめな不器用さが見えます。
女王様的な姉の下で、前に出ずに一歩引いたパーソナリティが形成されていったのだろうというキャラクターの説得力が光る。
控えめな秋崎
控えめな宇佐美
どこにでもあるようなささやかな日常の中に、ほんのちょっぴり進んでいく恋の行方。
スロースタートで、スローモーションでいい。
それでも、たしかに。