第78話 解放?

一夜明け……。


俺達は、山の中腹近くに見えている建物に向かって出発した。


◇◇◇◇◇


「エディオン様、アイネ様は何か仰っていたんですか」


「それが……。ただ、『解放よろしくね!』としか教えてくれなかったんだよ」


出発前、朝食を食べながらみんなで会話をしている時、珍しくアイネ様が俺の意識の中に突然割り込んできて声をかけてきたのだ。


『エディオン。解放よろしくね!』


そのせいで俺は喉に物を詰まらせて咽かえってしまったのだが、ソフィアはアイネ様の神気を感じ取っていたようで、俺に対して先程の問い掛けをしてきたのだった。


「じゃぁ私たちがこの地下空間に飛ばされたのは、アイネ様の意思が働いているということかしら」


ヘザーさんが恨めしそうに言葉を口にする。


「それは無いんじゃないですか。元はと言えば、ヘザーさんが不用意に宝箱の蓋を開けた所為だと思うんですが」


瑞月さんがその事実を包み隠さずヘザーさんに突き付ける。


「うっ!」


瑞月さんの的を得た指摘に、ヘザーさんがその首を垂れる、一応の自覚はしているようだ。


◇◇◇◇◇


程なくして山の中腹まで登り切り、建物の入口に到着した俺達はその造りに圧倒されていた。


遠目で見えていたのは入口の構造物で、本体は岩山を利用した神殿造りとなっていたのだ。


「この鍵穴にソフィアが手にしている鍵を差し込むと扉が開くのかな」


「試しに差し込んでみましょうか」


そう言うと、ソフィアは手にしていた鍵を鍵穴に差し込み、時計回りに鍵を回した。


ガチャリ!


ギィ~ギィ~~ギィ~~~!


5m×3m×0.5mの両開きの木製の大きな扉が軋み音をたてながらゆっくりと神殿の中の方へと開いた。


「ねぇ、アイネ様の言う解放って扉を開ければいいということなのかしら?」


「ヘザーさん。その意見は、余りにも安直過ぎるのではないですか」


ヘザーさんと瑞月さんによる掛け合いをほんわかとした気持ちで見守っていると、暗かった神殿内が次第に明るくなっていく。

どうやら、壁伝いに設置されている魔法の燭台が入口付近から奥の方に向かって灯りを点し始めたようだ。


「神秘的で不思議な光景ですね」


ソフィアが次第に奥へと明るくなっていく神殿内の様子を見ながらそんな感想を漏らす。


その灯りに導かれるように、俺達は神殿の奥の方へと歩き始めた。


そして歩き始めた入口から50m程入ったころ、天井に設えて有ったのだろうひと際大きな燭台付きのシャンデリアに灯りが点った。


「「「お~っ!」」」


俺を含めその場に居る全員が感嘆の声を出していた。


◇◇◇◇◇


エディオン、神殿の祭壇まで到達したかしら……。


あの地で神殿が迷宮に取り込まれてしまってから彼此300年。


やっと地上に戻すことが叶う時が来たわね。


今まで私も神界から色々と手を尽くして試してみたけれど、上手くいかなかったのよね。


現世に降臨して直接力を使う訳にはいかなかったし。


台座に説明書きを入れて置いたから、エディオンなら私の意図を理解して行動してくれるでしょう。


でも悔しいわね、迷宮に思念の送信を邪魔さて片言しか送れないなんて、エディオンが迷宮に入る前に話を通しておかなかった私の責任でもあるのだけれどね。

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三男で始まった俺の異世界貴族生活 あんドーナツ @ando_natu

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