第77話 鍵
あれから三人と無事に合流することが出来た俺とシャル。
今は合流地点の森と草原の際で、魔物などを寄せ付けない結界を用いた安全地帯を造り今後の方針を話し合っていた。
「エディオン様、これからどうされますか?」
ソフィアの問いかけに俺はダーティゴブリンがドロップした鍵を皆に見せながら……。
「この鍵が、ここから脱出する為に役立つと思うんだよ」
金色に輝く鍵を先ずはソフィアに手渡して順番に見てもらう。
「魔力的な何かを感じるわね」
鍵を手にしたヘザーさんが感想を述べる。
「でも、この鍵を使用するような建物はこの辺りには在りませんよね」
瑞月さんが、鍵の使用方法について疑問を提示する。
「そこなんだよね。先ずはこの鍵を使うための建物もしくは構造物を探さなくてはいけないんだけれど」
……。
鍵を車座の中心に置いて、しばらくの間、俺を含めてみんな考え込んでしまった。
数分後……。
ソフィアが何かアイデアを思い付いたようで、もう一度鍵を手に取ると、自身の魔力を鍵に流し始めた。
意外にもその行動が正解だったらしく、魔力を注入された鍵からは一筋の光の矢が伸びて、とある方向を指し示していた。
「ソフィア、ナイスな判断だ」
「エディオン様、ありがとうございます」
大好きなエディオンに褒められて、顔をほんのりと赤く染め笑顔を見せるソフィア。
「エディ、光の指し示しているこの方向に向かうで良いのかしら」
「そうだね。ただ、日も暮れそうだから、夜が明けたら出発することにしよう」
迷宮の中がどういう造りになっているのか分からないが、昼夜があるようなので俺達はそれに従って行動することに。
一夜が明けて、朝食を済ませた俺達は鍵の光が示した方向へと向かって歩き始めた。
早朝から歩き始めて、陽が沈む頃にようやく目的の場所の近くまで辿り着くことが出来た。
「山の麓から少し上にあるあの建物が目的の場所でしょうか」
鍵の光が指す建物の方へと目線を向けながら、ソフィアが俺に確認をしてくる。
「そうみたいだね」
すると、ヘザーさんが……。
「じゃぁ、このまま一気に進みましょう」
「ヘザーさん、夕暮れ時だからここで一夜を明かしてからでも遅く無いですよ」
と、瑞月さんがヘザーさんの逸る気持を窘めていた。
「瑞月さんの言う通り、一夜を明かしてから行こう」
俺が纏めるように進言すると。
「分かったわよ。そうしましょう」と、ヘザーさんも渋々同意してくれたのだった。
◇◇◇◇◇
さて、ここに到達するまで時間が掛かってしまったのは……。
「この兎、只ものじゃないわ」
「気配を感じるまでの距離が短かすぎます」
俺とソフィア、シャルは普通に対応していたのだが、珍しくヘザーさんと瑞月さんが、兎に手を焼いていたのだ。
兎の名前は、『アサルトラビット』突撃兎の名の通り何処からともなく強力なジャンプ力で飛んでくる厄介な魔物で、その飛んでくるスピードも尋常ではなく、並の冒険者なら一撃でやられてしまう程の攻撃力だ。
それにより、この場所に到達するのが遅くなってしまったのだった。
恐るべき、迷宮内に生息する兎の能力。
地上では絶対に出会いたくない類の魔物だった。
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