第76話 怒りに任せては

ブモォー!


ブヒッブヒッ、ブモォー!


「もう、この場所から移動したくないのに、迷惑な奴らね」


わたし達三人が、エディオン様とシャルちゃんの微かな魔力反応を感知し、喜んでいた時に近づいてきた豚と猪。


「どうしますか?ヘザーさん」と、私の問いかけに答える間もなくヘザーさんは急激に膨大な殺気を豚と猪に向かって放っていた。


ブヒッ~~~!


ブヒッブヒッ、ブヒッ~~~!


ヘザーさんの怒りに任せた殺気を受けた豚と猪はその場で泡を噴き、恐怖に駆られた顔付のまま絶命してしまった。


「ヘザーさん、やり過ぎです」


瑞月さんがヘザーさんを注意する。


「良いのよ、こんな奴ら。でも、エディにはわたし達の場所を知らせることが出来たと思うわよ」


如何やらヘザーさんはそこまで考えて殺気を当てたらしい。


少し後付けの言い訳のような気もしないでもないが、まぁ良しとしよう。


そして豚と猪は、わたし達の目の前で光の粒子となって消えると、そこにはドロップアイテムとして、それぞれの肉のブロックが鎮座していた。


◇◇◇◇◇


その頃……。


「体全体が急激に凍り付くような寒気が走ったね」


ウォ~~~ン!


多分ヘザーさんの発した殺気だと思うけど、俺とシャルは一瞬にしてマイナス50℃の世界に放り出されたような感覚を味わっていた。


「まぁ、あの三人ならラスボスでも、ものの数分でやっつけてしまうだろうけど」


ウォン!


「今ので三人が居る大体の方角は理解したけど、道のりは大変そうだよね」


そう俺とシャルの目の前には渓谷と山並みがそびえ立っていたからだ。


「ここは本当に迷宮の地下なのか疑いたくなる光景だね」


ウォン!


某国にある、グラン◯キャニオンに似た風景を観ながら俺はため息をついたのだった。


「ここでジッとしていても始まらないから、行こうかシャル」


ウォン!


深い谷はフライ魔法で飛び越え、比較的浅い渓谷の間を瞬足を使って駆け抜けていく。


途中で出現する魔物の相手などはせずに、俺とシャルは時間にして30分程で一気に渓谷を駆け抜けて視界の開けた広い草原へと到達した。


「あの先に見える森の中から三人の魔力反応があるね」


俺の語り掛けにシャルが振り返る。

シャルもしっかりと三人の魔力を感じ取っているようだ。


◇◇◇◇◇


そして……。


「エディオン様が近くまでいらしたようです」


「魔力反応が急に強くなったわね」


「シャルちゃんのも感じますね」


わたし達三人は、エディオン様とシャルちゃんの魔力を感知した事で安堵したのだった。


「この方角のようだから、わたし達も移動を始めましょうか」


私がそう提案すると、食事を終え座って休憩していた二人も頷くと、その場に立ち上がった。


そして、手分けして食事の片付けをして後始末を終えると、わたし達三人はエディオン様とシャルちゃんと合流する為に森の中を歩き始めたのだった。

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