第18話 目指せ社会復帰 ~名言編~
好きな名言は?とか座右の銘は?と言われても、いつもぱっと思いつかない。
私がスナックで出会ってきた人々は、何か信念のようなキーワードがある。その人達が大事にしている言葉は、彼らの生き方を投影しているような気がした。
スナックで働いている時に聞いたおじ様たちの金言で印象に残ったお話。
スナック勤務初日に出会った、マーロン・ブランド的ボスおじさんは「貧すれば鈍する」を教えてくれた。言葉自体は知っていたけど当時いまいち意味がわからなかった。
ボスおじさんは団塊の世代、集団就職で上京し成り上がって会社を興し成功した社長さんだ。今でも現役で仕事をしながら大好きなアメ車に乗ってゴルフに行く。美人な奥さんに浮気の謝罪をするためにバーキンを買って色が気に入らないと言われて突き返されトホホとする元気なおじさん。
お金がなくて悔しい思いをたくさんしてきたのだろう。
鈍しない為にたくさんお金を稼いで、自分で納得できるお金の使い方をしている。
浮気はあかんだけど、70歳でも色気むんむんで男女問わずボスおじさんのファンは多い。
お金を少しづつ稼げるようになって、今までできなかった事ができるようになると、可能性は広がった。欲しかったものが買えたり、旅行に行けたり。
実家の経済環境は下の上くらい。
お母さんに好きなものを買ってあげられた時、ちょっと実家の支払いが苦しい時に私がお金を出してあげられる。お金があってよかったと思った。
これが鈍しないということか?
でも「貧する」はお金がない事だけではないと思うようになった。
お母さんも物質的に喜んでくれた訳ではない。
ニートな私がお買い物できるようになった事、家庭に入れられるくらいお金を稼げるようになった事を喜んでくれたに違いない。
ボスおじさんほど稼いだことがないから想像でしかないが、きれいな使い方そうでない使い方があるだろう。
いくらお金がたくさんあっても、さみしそうな人や嫌われる人はたくさんいた。
衣食住を保てるお金があればいい。たまに少し贅沢できるくらい、親を助けられればもっといい。頑張って働こう。
そして、心が貧しくならないようにしよう。そう決めた。
お金って難しい。毒にも薬にもなるし。
求めても与えられんし。
お金の酸いも甘いも知っているボスおじさんの言葉だったから、とても印象に残っている。
もう一人素敵な紳士が教えてくれた言葉、というより経験談。
お店終わりにママに連れて行ってもらった浅草の老舗バーのマスターは、「どんなに苦しくて、悩んだとしても三日間」
三日、思いっきり悩む。それ以上悩むと前に進めなくなる。自家中毒になる。だから俺はどんなひどい目にあっても落ち込むのは三日間と決めている。と仰っていた。
人生の荒波を超えてきたマスターの三日間、という期間は何故かものすごい説得力があった。一日じゃ到底立ち直れないし、二日じゃまだ諦めがつかない。三日目には一日目と二日目に悩んだことを反芻するだろう。そして良くも悪くも答えを出さざるを得ない。四日目にはもういい加減前に進まねばと重い腰を上げるのだ。
初めて聞いた時は三日間は短すぎないか?と思ったけど、ニート期間中ぐずぐずと悩んでいる時に問題は大体三日間で出尽くすとわかった。私は4か月も悩んでいたが、問題は最初から変わっていなかったし、ただ前に進むのが怖くて踏み出せなかっただけだ。
三日、と決めると楽になれた。悩む事に制限をつけないといつまでも悩み続けるからだ。
今でも何か悩む時は、マスターの三日間を肝に銘じる。
まだまだ三日以上悩んでしまうこともあるが、三日で立ち上がれる精神の体力がつけばいいな。
色んな人の色んな言葉を、折に触れて思い出す。
スナックで働く。 Nょろニョロ @kamomenotamame
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