エピローグ

第79話 お見送り


 全てが終わり、妖精が解放された事で、エルシェフ率いる魔族の軍勢は、帰っていきました。私は、その功労者として、父上から物凄く褒められました。そりゃあもう、凄く。でも、私のしたことや、お母様のしていた事は、表沙汰になる事は、ありませんでした。だから、秘密裏に褒めてもらったんです。更には、お小遣い、ざっくざくです。

 ところで、行方が分からなくなっていたキレイなゼンですが、お城から逃げようとしていた所を、レックス兄様に斬られて、死んでしまったそうです。なんでも、突然苦しみだして、人ではない姿になってしまったとか……そんな彼もまた、やはり黒い液体となり、死体も残らず消えてしまったみたいで、死体も残らず消えました。

 コレで、取り残されたゼンの方も、死んだんですかね。それを確かめる方法は、ありません。どうやら、裏の世界は、跡形もなくなく、消えてしまったみたいですからね。


「……あんた、本当に性格が悪いわね」

「ツェリーナ姉様ほどではないと思います」


 現在私は、牢獄に囚われたツェリーナ姉様の、お見舞いに来ています。その牢獄は、私のいれられていた場所よりも、余程環境の良い場所です。ベッドもあるし、布団もちゃんとあって、トイレもちゃんとある。文句なんて言われる筋合い、ないと思うんですけどね。

 そんなツェリーナ姉様ですが、少し老けています。フェアリーの粉を摂取していた事による影響が出始めているようで、急激に老化が始まり、お母様そっくりになりつつあります。まだ若かったはずのツェリーナ姉様が、この有様ですよ。笑っちゃいますね。


「はぁ……オーガスト兄様は、どうなの?」

「相変わらずですね」


 オーガスト兄様は、あの後、ちょっとおかしくなってしまいました。女の人を見ると怖がるようになり、死体がーとか、お母様ーとか言って、泣き叫びます。女好きだったオーガスト兄様は、すっかり委縮して、閉じこもるようになってしまったんです。


「これであんたは、父上のお気に入り。次期女王候補に名乗り出たってことね。その時、私はどうするの?殺す?」

「そんな事は、しませんよ。放っておいたって、ツェリーナ姉様の寿命はきっと、凄く短いです。その時まで、しっかり生きてください。この子たちにした事を、後悔しながら」


 私の肩の上に乗っている、あの時助けた妖精……名前は、フゥと言います。ハクが、そう教えてくれました。彼女は、私に助けられた後、レックス兄様に保護されていたようで、私のピンチに駆け付けてくれました。

 フゥは、すっかり私になついてしまったようで、私から離れてくれません。もう、可愛くて仕方がないんですよ。だから、私はフゥと一緒にいる事にしました。ハクにも、許可を取っています。

 そんなフゥを見ながら言うと、ツェリーナ姉様は凄く嫌そうな顔をします。


「お母様にたぶらかされて、私も少し、やり過ぎたみたいね……ホント、嫌になる。ところで、あんたのその格好……何で、ドレスじゃなくて、騎士の服を着てるのよ」

「何故だと思いますか?」


 私は、それに気づいたツェリーナ姉様に対して、ニヤリと笑って答えます。


「……あんた、まさか──」


 私は、お城を背に、馬に乗って旅に出ます。

 今回は、お城総出の、華々しいお見送りが繰り広げられ、私の行く先には、兵士達の壁が作られて、私はその中を進んでいきます。

 私は、旅に出る事にしました。お母様を探す旅です。不老不死だというからには、絶対にまだ、どこかで生きているはず。それを探し出し、お城に連れ帰る事が、旅の目的です。お供には、肩に乗っている、フゥと、オリアナと、レストさん……心強い仲間を率いて、私は行きます。

 私が旅に出ると言った時、2人は全く迷いもなく、付いてくると申し出てくれました。頼むまでもなく、です。本当は、私から頭を下げて頼むつもりだったのに、拍子抜けでした。


「ぬふぅ。グレアちゃんと密着ー」

「姫様。何かされたら、すぐに私に申し出てください。レスト様を、すぐに排除します」

「排除!?私、何をされるんですか!?」


 馬に乗れないレストさんは、私の後ろに乗っています。相変わらずの密着具合ですが、もう慣れました。


「だ、大丈夫ですよ、オリアナ。何かされたら、自分でどうにかします」


 具体的に言えば、鼻の穴に指を突っ込むとか。レストさんの扱いには、旅を通じてだいぶ慣れましたからね。それと、相変わらず私の事が好きだといって、ベタベタとしてくる、そんなレストさんにくっつかれるのは、気づけばそれほど嫌ではなくなっている自分がいます。

 もしかしたら、私もレストさんの事が……?そう思う瞬間も、何度かありましたが、それを口にする事は、まだありません。


「───」


 肩にのっているフゥが、私の頬をつついてきました。


「なんでもありませんよ。さぁ、行きましょう」


 私は、オリアナと、レストさんの顔を見て、そう告げます。それから、見送ってくれている、父上や、レックス兄様。それに、私に背中を向けている、サリア姉様に目を向けてから、お城を出ます。

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世界最強の魔術師が百合でした あめふる @ameful

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