第1話 ゲームを愛する者へ
『私はゲーマーだ』
私がゲームを始めた理由は退屈な日々から抜け出したかったから。もともと友達の多くない私からすればリアルは十分すぎるほどの苦痛を感じてた。
それを忘れられる環境に居たいと思った私にとって、ゲームは恩人のようなモノだ。
最初に始めたゲームはRPGだった。キャラクターを操作し立ちはだかる強敵を倒し、世界を救う王道ストーリーだ。一人で内容の全てを網羅するくらいにはやり込んだ…今でもプレイして教えれるくらいだ。
そして今、様々な種類のゲームを経て私はオンラインの世界に足を踏み入れた。このお話は、私がゲームという世界から頂いた素晴らしい仲間たちとその冒険の物語だ。
朝は非常に憂鬱だ。一日は朝起きてから始まるというが、私からすればそれは苦痛だ。学生の身分としては登校せざるを得ない。特に私のような友達の少ない人間には親切じゃないシステムだと思う…
通い慣れた通学路を歩いていると後ろから肩を殴られたと思える力で叩かれた。
「おっはよ〜!」
朗らかな挨拶をしてきた女性は五十嵐もも、私の学校での数少ないゲーム友達だ。一般的に見ればゲームとは縁のなさそうな明るい子だけど…
「…おはよ…なにかいいことでもあった?」
私からすれば肩を殴ったと感じる力で叩いてくるほどの元気があることが不思議で仕方ない。
「ほほー…お忘れではないですよねぇ?」
「今日は新しいゲームの発売日だよ!はやくがっこー終わらないかなぁー…」
隣で見た目通りのテンションでピョンピョンと飛び跳ねてる彼女は可愛らしい。だがパワフルすぎるのは私の性格にとっても、私の体にとってもあまりよろしくない…
「さすがに覚えてるよ。今日はそのために夜ご飯いらないとまで言ってあるし」
ゲームを愛するものなら理解があると思うが初日は非常に大切なのだ。
「さ…さすがだなぁ…その気合は見習った方がいいのかなぁ…?」
いや見習わなくていいよ…という顔をして彼女を見ると、だよねぇ!と言わんばかりの笑顔で返したくれた。
今日発売の新作ゲームの内容について話をしているうちに学校まで到着した。彼女とはクラスが違うのでそれぞれの部屋に向かったがこれから17時ごろまで何もできないのか。と思うと足取りが重い。
うちの学校は偏差値が高くはない。そのおかげ、というわけではないけども勉強は遅れることなくついて行けている。一般的にゲーマーは成績があまりよくないというが、それはゲームに知識や技術を行使しているため勉強しない、のが通説だと思う。今日一日くらいはゲームの事でも考えて過ごそうぜ、と頭の中で響く悪魔からの囁きに耐えられそうにない。
私たちが今日プレイしようとしているゲームは本格(?)FPS。
そのゲームの名前は「SVW」
略は survival various world らしい。FPSの対人コンテンツに銃のみならず、戦車やヘリコプター、トラップなどを駆使して戦うPT総当たりゲームだ。通常のFPSだと倒した数に応じて強い兵装やシステムが使用できるそうだが、このゲームが大きく違っていることはまずそのシステムはない。かわりにステータスとして筋力や敏捷などをレベルアップごとに自由に割り振ることができる。使える武器や消耗品がPTポイントを使用することでそのプレイヤーに対して希望の武器やアイテムが付与されて、それを超える数値での出撃はできない。つまり各々が他のメンバーのことも考えながらポイントを使用して武器のセットを考えていかないと誰かが損をするという羽目になる。振り分け方は自由なのでメンバー1人に武装を寄せるスタイルもあり得るのだろう。
解放できる武器もそれぞれのプレイヤーが育てたスキルツリーのものしか各自使用することができない。つまりはアサルトライフルなどをフルカスタムしたものをアサルトライフルのツリーを使用できるレベルまでスキルアップしていないプレイヤーが使うことはできない。PTのスキル度合いも組み合わせも重要になってくるのだろう…
色々とモヤモヤするがプレイしてみないことにはわからないのが現状だ。と、思った頃には一日最期の授業のベルが鳴った。今までのどの日よりも早く帰り支度を済ませ、もものことを完全に忘れ、自宅までの最短ルートを駆け抜けた。ももには後で謝っておこう…
家に着くなり、乱れた髪や荒い息を整えることなくゲームを起動する。事前にネットで先行ダウンロードを済ませているから時間はかからなかった。私はRINEでももに連絡をし、軽く食事を済ませ本格的にプレイのための環境づくりを完了させた。まさかプレイ始めてその返信に気付くこともなく、目の前の新しい世界に没頭する事となるとは思いもしなかったのだった。
撃たれる覚悟のあるモノはついてこい @takky6614
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