※作品は絶対評価したいので星の数はぜんぶ二つです。三つでも良かったのにね。
※最後まで読んだ感想です。
路上ライブ、ギター、百合、と琴線に触れる要素が多く、吸い寄せられるように読み始めました。冒頭に示されているように、喪失と哀切に満ちた終幕が予想される物語ですが(そして一種の書簡小説でもある)、それを知ってなお読み進めたいと思える、美しさを持った作品でした。いや、「三十代社会人と女子中学生の歳の差百合いいよね……」みたいな脳の壊れたことを言いたいのではなくてですね。
『未来になれなかった日々』の過酷な回顧録かもしれませんですが、「過酷な人生だ、あなたはどう生きて行く」という問いをもたらしてくれます。
さて、あんまりシリアスに振れ過ぎてもよくないので、ここからはレビュー主の独断と偏見混じりの登場人物紹介です。
〇私―――柏市で個人事業のギター職人をしている女性。個人名が出てこないので、便宜上カッコつきの“私”と呼称する。
本作のあらすじにもある通り、駅前のあまりにたどたどしい演奏をしていた女子中学生に声をかけて世話を焼き、心通わせることになる。モノローグではツンデレ。それも、ツンとデレが9:1くらいの伝統的ツンデレ。そんな人が女子中学生に声をかける。ツンデレ不審者さんである。あらぬ角度から真面目系天然ボケをブチかましてくる辺りも規範的である。
彼女のモノローグ(書簡)で話が進んでいくのでぼかされているが、はっきり言って変人。とはいえ、レビュー主が知っているギター職人は、いつ見ても行きつけの飲み屋でグデングデンになって謎の言語を話してたり、ヘッドもボディもない前衛的過ぎる変態ギターを作って悦に入る変人ぞろいなので違和感はなかった。何かが間違っている。
〇まつり―――“私”に声をかけられた路上ライブ少女。恐らくamazarashiっぽいアーティストの曲に触発されてギターを購入したが、チューニングのことをよく知らない初心者あるあるをかましたまま弾き語っていたおかげで運命の相手(♀)と出会う。
不登校の不良だが、「不良なら金髪にギターっしょ」的に大真面目な不良道を歩む律義なアウトロー。家庭環境も学校での人間関係にも問題を抱えるつらみのマシマシトッピング状態だが、持ち前の聡明さも手伝って強くたくましく思い込んだら一直線で多少間違ってる道をアクセルベタ踏みで突っ走る豪傑である。のちにSFにも目覚める。あと、世界を獲れる右を隠し持っている。
なんのこっちゃと気になったら是非読んでみてください。