【アリス】=アレフ・リデル②
だってフェデリが、エリノアのことを嫌いじゃない、って?
……いや、でも、そっか。こうして協力者になってくれてるぐらいだもの。すでにゲームとは違う事実が出来上がってるんだ。
それを踏まえたとして、今のわたしとフェデリの
…………知り合いレベルかな。
少なくとも、お付き合いする段階じゃない。うん、あり得ない。
「そこまで驚かなくても。嫌いだったら協力しているわけないだろう?」
フェデリがわたしに力を貸してくれてる最大の理由は、未知の現象への研究解明。そこは変わってないと思うけど、本能に逆らえなくて仕方なく――ってほどでもないのは分かる。多分だけど、まあ協力してもいいかなぐらいには思ってもらえてるんじゃないかな。
でも、だ。
「貴様はずいぶん
嫌いじゃないって言ってもらえたことにはほっとする。だけど嫌いじゃないから
「妾は砂上の城に興味はない」
「
「
フェデリがわたしに協力を決めたのは、
「君に興味があったからだよ。いくらそれが世のため人のためになったとしても、嫌いな相手に力を貸し続けられるほど俺は
「
今のセリフは、どうしても受け付けない相手以外をそうそう見捨てるつもりがないとイコールでしょ。わたしだってそこまで嫌われてるとは思ってない。
鼻を鳴らして断言したわたしに対し、フェデリは
「たとえ君が俺を知っているのだとしても、知ったふうに言われるのは面白くないね。今ここにいる俺の意思は無視なのか?」
「今ここにいる貴様を見て言っている」
「……ふうん?」
不快さは多少
でも、
だってフェデリはここまで一度も、
わたし自身は研究対象だとしても、周りで起こった
けれどフェデリは罪らしい罪もなく死刑宣告された人々のことも、国民の負担にしかならない
それでも己の興味のためだと言い張るなら。
「
「……それは多分、君がそうしたそうだったから、だよ」
「妾の意を
確かにわたしも一刻も早く、
それはわたしだったからとか、そんなことじゃないはずだ。だって
「……」
「まだ
「俺が? 何を言ったって?」
「貴様は妾を嫌いではない、と
きちんと相手を見なければ、
フェデリはわたしを見て、嫌いじゃないと言ってくれた。でもわたしだって、力を貸してくれてるフェデリのこと、近くで見てるんだから。
「己の言を返されて不満に思うとは、
わたしから見たフェデリは、そういう人だったの。
本人は否定するかもしれないけど、わたしが感じたことはフェデリ自身にだって変えられないんだから。
さあ、他人の主観を覆せるならやってみろ。
ちょっと意地も
「俺が君を見ているのだから、君もまた俺を見ているわけだ。なるほど、道理だ。そして君の中の俺を否定できる材料は、確かに俺にもないな」
そういうことです。
主張が通って満足なわたしの顔は自然と
「エリノア。君はジョーカーというものを、どれだけ知っている?」
「おそらくすべて」
攻略対象のバックグラウンドだもの。しっかりゲーム中に出てきましたとも。
ジョーカーは、世界にただ一人の異質な存在。血族とか、仲間とか、そういう人はおらず、ある日
ただしそれは一個の存在としての
「そうか、なら話は早い。俺はジョーカーとなってまだ日は浅いけど、これまでのジョーカーが
え。その話わたしに――エリノアにしちゃうの? アリスにじゃなくて? スチルも用意されてたぐらいのエピソードだよ? いや、別に減るものじゃないからアリスにも話せばいいんだろうけどさ。
「それだけ多くの人たちと関わってくれば、
息を継ぐ間、ただ見つめ合うだけの時間が生まれる。そこにあったのは
ゲームと同じ笑い方だ。でも、少し違う。だってそこには、今、フェデリがこの瞬間に感じている心が表れているから。
数パターンしかない立ち絵でなんて、表現できない。
温かさが、息づく命が、目の前にある。
「俺が一体どういう性格をしているのか。そもそも今の俺は『俺』なのか、それともジョーカーという存在そのものなのかもよく分からない。けど、君が
フェデリが自分自身に不安を抱いていることを、わたしは知っている。もちろん、攻略中にそれなりの結論は出して
「俺は今初めて、『俺』として人と接した実感を得た気がする」
……あれ? フェデリが今の自分を『自分』として認めるのは、シナリオ後半だったんだけど……。ここでいいの?
とはいえフェデリの精神安定上、
「そ、そうか。光栄に思え」
やや
わたしがうろたえたのが伝わったのか、フェデリは
「俺の初めてを
言い方ぁ――!!
「
いや分かってるけどね! フェデリがそーゆーキャラだっていうのは!
「真意がどうであれ、その言い様は悪質だ! 死刑に処するぞ!」
その手の発言が可愛いで納まるのは、深読みをしなくていい
「真意が伝わってるなら照れることないだろうに」
「
セリフの真の中身なんて関係ないんだ! ガワがすべてだ! そもそもからかおうとする意図が丸出しだし!
分かってるなら
うー。ドレスの下で
わたしのうろたえっぷりが
くそう、今に見てろ。いつかからかい返して……無理だろうなあ。スペックが違う。
向こうは作中最強キャラ。こっちは
「まあとにかく――ラビのティーパーティー、探してくるよ」
「さっさと行け」
ちょっとフェデリと
「大丈夫」
「何がだ」
「何とかするから」
……なんか、ズルい。
からかうだけからかっておいて、最後に欲しい言葉をくれるとか、完敗以外の何ものでもないじゃないか。
そう思ってしまうぐらいには、わたしは着々と進んでいく現状に
ゲーム通りに運んだら、わたしの人生がロクでもないものになるのは確定だ。悪ければ人様も巻き込むだろう。
自分で決めてやってるなら、
大丈夫だ、って、
分かっててやってるのかなあー……。分かってる気がするなあ。フェデリだからなー……。
ただでさえ
「
「心得ました、女王陛下」
◆
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不思議の国のハートの女王 世界の強制力で毒吐きまくり!? おかげで破滅ルートに入りそう…… 長月 遥/ビーズログ文庫 @bslog
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