ジリジリと鳴く私のお守り

第1話 私はベルの音が好きだ

　私ばベルの音が好きだ。特に好きなのが自転車のベルだ。

今の世の中自転車のベルなどいくらでも種類があるが、一番好きなのは母親の自転車に付いていた中にバネの入ったお椀をひっくり返したような形のものだ。

音色がベルというには雑多な音で言葉にすればジャリシャリと言うのだろうか。

音の綺麗さなら鐘を付くようなタイプの方が何倍も綺麗に聞こえる。

だけど私が好きなのはあのジャリジャリとなんとも言えない音を出す、母のベルなのだ。

　一番近くで聞いていたのは母の自転車の前籠に乗せられていた時だろう。

私のすぐ右から聞こえて来る、ジャリジャリと耳が痛くなるような音色。だけど一度母がそれを鳴らせばどんな人混みだって道が開けて行った。今思い返せば有ればよく無い使い方なのだろうけど、あの時だけは私の母は親指一つで道を開く魔法使いだったのだ。