主人公の成長、というか現実とのギャップを前に熱意空回る系主人公を、周りの人達が暖かく見守るヒューマンドラマ。
バス運転手以前に社会人経験のある主人公なので、育むものが社会適正や熱意ではなく技術的経験だったりするため、「成長」の表現にさぞ苦慮された事かと思いますが、その点よく描けていると思います。
主人公のちっちゃく可愛いく泥臭く走り回る感じが目に浮かぶようです。
そして、成長モノの要素としては指導係の島崎というキャラクターの存在が大きいです、彼が作品の柔らかな雰囲気を決定的なものにしている。
まぁ全体的に枯れ専ホイホ・・・
環境設定的に若い人の出てきにくいシチュエーションもとても良く活かせていると思いますw
惜しむらくは、せっかく「松江」という固有の環境設定があるのに、そののんびりした風景や、観光名所等の細かい描写がほとんど無い事です。地域の足という設定があったり、バス運転手として新人の今日子に風景を楽しむ余裕はなくとも、それを指摘して促す役割の人間は、島崎を始め多くいただけに大変もったいなく感じました。
地域住民にとっては当たり前でも、地域的にも職能的にも外様の我々読者が経験し得ない「バスの運転席からの街の外観風景」にはもう少し言及があっても良かったかなって感じです。
あと、連載形式上仕方のない部分もありますが、物語の流れ(波?)が大きく、各話に細かい山が付けられなかったり、次話への引きが弱くなる事が想定される時は、各話にタイトル付けるより、章分けして物語全体の大きな展開ごとにタイトル付けたほうが良さそうです。
例えば「涙」とか、読者によっては「泣かされるのか」と構えちゃうと思う、まあこれは個人の好みかもですが。
長文失礼致しました。
酷なこと書く時のほうが長くなっちゃう癖があるので重ねて申し訳ありません。非難のつもりはございませんのでご容赦下さい。
ヒューマンドラマとしても、バス運転手としての職能の疑似体験しても、大変楽しく堪能しました。
今までバス運転士が主人公の話と言えば、物語の本題は別のところにあって、その主人公がたまたま運転士をしていた。というパターンが多かったですが、これは運転士という職業そのものがテーマとされています。作者はさすが現役の運転士さんということで、その辺の描写はリアルそのもの。しかしそれだけの仕事モノで終わらないのがこの作品の凄いところ。キャラ一人一人に個性がちゃんとあり、台詞がいきいきしている。仕事の大変さや素晴らしさがしっかり読む者に伝わってくる熱さがあります。
2020.2.15追記
いやぁ…読了させてもらいました。凄いです。福寿会で泣かされ、壮太の死で泣かされ、そして最終話でもしっかり感動させていただきました。正直バスの運転士という題材として使い辛いテーマでここまで心を動かされるとは思わなかったです。終わってしまったのは本当に寂しいですが、気持ちの良いラスト。本当に本当に満足です。作者様、ありがとうございました。