第7話 生活保護
それから一週間ほど過ぎた。
やっぱり、そう簡単に治るものじゃないらしい。
薬が変わると逆に体調が崩れることもあった。朝すっきり起きられるときもあれば以前の様に中々目が覚めない時もある。
手の震えも、なかなかおさまらない。
あの新しい先生が嘘をついてるんじゃないか、イケメン先生の方が正しいんじゃないかって思う時もあった。
でも薬だけの問題でもないと思うから、新しい先生に勧められた通り軽い散歩と、シャワーだけで済ませてたお風呂をちゃんと湯船に浸かるようにした。
新しい先生曰く、汗をかくと体にたまった薬が出ていくらしい。
たしかに軽く運動した後は体調が良い気がする。
それ以前にろくに運動をしていなかったから体調が悪かっただけかもしれない。小学校の頃、マラソン大会の後は疲れて泥のようにぐっすり眠り込んだのを思い出した。
さらに1カ月ほど過ぎた。
「これなら薬を減らして良さそうだね」
新しい先生はそう言って薬を減らした。朝昼夕飲む薬が朝夕だけになった。
通うたびに薬を増やしていったイケメン先生とは対照的なのが印象的だった。
相変わらず怖い感じの先生だったけど、体調は前より著しく良くなってきた。
手の震えも気にならないくらいになったし、朝起きられる回数も増えた。
何より、お母さんが安心してくれたのが嬉しかった。お父さんの雰囲気が柔らかくなったのが嬉しかった。
もう2カ月経つと、手の震えもなくなって、薬を飲み始めて出てきた症状はほぼなくなった。新しいお医者さんも、もう大丈夫と言って病院通いは終わりになった。
元々あった気分の落ち込みとか不安が襲ってくるとか、その症状はなくなったわけじゃないけれど軽い運動をして熱いお風呂に入って、ぐっすり眠れば幾分かは楽になる。
あと、友達と楽しくおしゃべりすること。
これが今の私の健康法だ。
結局、心療内科に通って何の意味があったんだろう。
青春の数カ月を台無しにされただけだった。
でも新しい先生が最後に言ってくれた。
「何年も薬の禁断症状が続いている人も珍しくない。それに比べれば貴方の回復は早い方です」
最後に、少し怖いことを言われた。
「一番厄介なケースは、軽いうつの状態で薬漬けにされ、判断力も思考力も鈍ってきたところで生活保護の申請を勧められ、それを受け入れてしまうことです。生活保護になれば医療費は無料になる。薬をもらって飲むことに抵抗感がなくなる。その先は、想像がつくでしょう?」
以上、私の体験談を終わります。
別に薬を飲むなと言っているわけではありません。薬を飲むのも自由ならやめるのも自由でしょう。
ただ、私の個人的な体験です。どうとるかはお任せして、筆を置きます。
編集 学生だった頃の私のうつ体験記 霧 @kirikiri1941
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