第6話 こころの病気

 初めはうつ病と言われた。

 その後、躁うつ病だって病気が変わった。後、パニック障害とか統合失調症色々言われたけど、よく思い出せない。


「病名にこだわり過ぎです。そもそもいわゆる『こころの病気』、まあ私は病気なんて言い方そのものが間違ってると思いますけど、こころの病気は医師によって診断名が変わることさえ珍しくないのです。レントゲンやCTで画像にはっきりと変化があるようなものじゃないですから。昔統合失調症と診断していたものを今は発達障害と診断したり、うつ病を時間がたってから躁うつ病と言ったり、医師の主観一つで病名が変わります」


 私は頭が揺さぶられたようなショックを受けた。

 こころの病気って、そんなにあやふやなものだったの?


「病名に拘らないで、あなたの生き方を考えてください。うつで気分が落ち込んだり、人前に出るとしゃべれなくなったり、それでもあなたは生きてきたんでしょう?」


 その日は漢方といくつかの薬をもらって帰ることにした。

 親からは色々と話を聞かれたけど、今日いった先生の言うことを話してみた。

 前のイケメン先生の言うことをあまり信じないようにする、とも言った。

 お母さんはお医者さんの言うことを疑うことに難色を示したけど、お父さんはそれもそうかもな、と言ってくれた。

 二人の反応の違いを見ていると今日の先生の言うことだけを信じている自分を客観的に見られた。

 これじゃ、イケメン先生の言うことを信じ切っていた時と変わらない。

 まず、疑いながら試してみよう。


 その日から数日、イケメン先生の薬をやめて新しい先生の薬を飲むことにした。


 朝は昨日よりすっきり起きられたのが嬉しかった。

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