第5話 別のお医者さん
二か月たったころ、私は起き上がるのも難しくなって学校も休みがちになった。
心配したお父さんが医者を変えるように勧めたけど、なんだかあのお医者さんに悪い気がして私は首を縦に振らなかった。
けれど、手の震えがあまりにひどくなってきたので別のお医者さんの所に行った。
そのお医者さんは前のイケメン先生と違って、若いけど筋肉質で気難しそうな印象だ。
お医者さんは私が今飲んでいる薬のリストを見ると、こめかみを指でぐりぐりしながら渋い顔をして呟いた。
「こんなに飲んでたら、具合が悪くなるのが当たり前だよ……」
「やっぱり、薬のせいだったんですか?」
その言葉に私は胸につかえていた物が落ちた気がした。
自分でずっと思っていた疑問。
体中に感じる違和感。
薬を飲み始めてから明らかに変わった体調と、気分の変化の波。
でもそれを友達に言ってもお母さんに言っても、保健の先生に言っても担任の先生に言っても、「医者の言うことには従った方がいい」って言われるだけだった。
でもやっと、私の感じていたことを肯定してくれる人に出会えた。
「薬というか、薬の副作用を別の薬で打ち消している。だからどんどんと薬の量が増えていくんですよ」
「でも、前の先生は副作用の少ない薬だって……」
あの先生が嘘を言っていたなんて、信じたくない。
私が縋るようにそう言うと、先生は私を睨んで鋭い声で言った。
「あなたの体調は何なんです? あなたの不調が、何よりの証拠でしょう。赤の他人の言うことよりも自分の体を信じなさい」
目の前の先生が、怖かった。はっきりと強い口調で言うから、怖い。怪物みたいにさえ思えた。
でも、言っていることは真実だと感じた。
私の体。
朝起きることも難しくなって。
手が震えてペンを持つのも大変になって。
気分の波が激しくなって……
これはみんな、イケメン先生の所に行って薬を飲み始める前まではなかったことだ。
「じゃあ、薬…… やめます」
私がそう言ったけど目の前の先生は首を横に振った。
「いきなりやめるとリバウンドがきます。弱い薬と漢方で調整しますから、少しずつ減らしていってください」
そう言いながらカルテに薬の名前らしきものを記入していく。
私はもう一つ気になっていたことを聞いてみることにした。
「それで、私って結局何の病気なんですか?」
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