主人公の少女の部屋には、水槽があった。そこには世界が閉じ込められていた。日々、食物連鎖が起こり、新し命が生まれている。主人公はその世界に夢中で、成績が悪化し、ついに父親が水槽に穴をあけてしまう。するとそこから、魚や動物たちが逃げ出して、部屋の中へ逃げ出す。
主人公は何とか水槽の中に逃げ出した魚や動物をおさめたが、そこから急に興味がなくなった。それは世界ではなく、ただの工作だった。しかし、主人公の水槽の中の世界への興味は再燃し……?
気をつけなければならない。
水槽の中の世界に。
閉じ込められた世界と、現実の主人公が同じ世界にいて、不思議な世界観を構築しています。果たしてこれは、作者様の夢なのか?
自身の夢を題材に描く作者様ならではの一作。
是非、御一読下さい。
水槽の中には世界がある。それは私にしか見えない世界のようで……
部屋に置かれた水槽の中に広がる世界と、それを見つめ続ける主人公のお話は少し不思議でまさに夢現のようでした。現実と幻想の合間にいるような主人公は水槽の中の世界に魅入られて……その結果、水槽に悲劇が起こります。
それから主人公は現実に居続けますが、ある時再び水槽と出会うきっかけがあり……この微睡むような幻想の匙加減がすごく好きです。主人公の周りに明確な現実があるからこそ、水槽の中の不可思議さが際立ってゾクゾクしました。
短編ということで完結していますが、この後の主人公と水槽の関係も気になってしまいます。書かれてはいませんが、気が付くと主人公まで水槽の中の住人になってしまいそうな気もするのです。そんな少し曖昧な危うさがあるのも、この物語の魅力でしょう。幻想や少し不思議なお話が好きな方は絶対に好むと思います。
水槽の中に広がる世界。是非皆さんも覗いてみてください。