3.ネコっぽいのか、イヌっぽいのか


 キツネはネコなのでしょうか、それともイヌなのでしょうか。分類学的には「ネコ目イヌ科」ですからイヌなのでしょうが、そもそもどのイヌ科動物もなので、ではそもそもイヌとは? というところからお話しなくてはなりませんね……。いや、ここではキツネのことだけを考えるので、やっぱりやめておきましょう。

 ではなぜ、そもそも「キツネはネコかイヌか」という疑問が出たかというと、イヌ科動物にしてはあまりにネコっぽい特徴が多いからです。これから書いていきますので、ぜひ皆さんも一緒に考えてみてくださいね!



〈ネコっぽさ〉

・瞳孔!

 最もネコ的な特徴は、キツネの瞳孔でしょう。イヌ科の動物は基本的に瞳孔が丸い形なのですが、キツネはネコ科動物だといわんばかりに瞳孔が縦に細くなっていま(1)。もうこの瞳すらかわいく見えてくる私は末期でしょうか……? 

 スリット状の瞳孔は桿体細胞という、暗闇に強い細胞がたくさんある形らしいので、夜行性のキツネにはピッタリですね! というか夜行性という時点でこれまたネコっぽいといえます。


・鳴き声!

 キツネの鳴き声は、日本では「こんこん」という風に擬音化されていますが、皆さんは本当の鳴き声を聞いたことはありますか? といっても、キツネの鳴き声はたくさんあるのでどれを聞いていただこうか迷うところではありますが……、まあ、ネコっぽい特徴ということで、ここはめちゃかわな鳴き声を聞いてもらいましょうか(鳴き声についての特集は、また今度!)。

https://www.youtube.com/watch?v=8hq6khWESr0(2)

 この動画では二種類の鳴き声が聞こえます。一つはこゃーん・きゃ~んという、もうなんでそんなに鳴き声までかわいいんですか反則です的な甘い声と、もう一つは「げっげっげっげ」という、何かをぶつけ合わせたような声です。後者は恐らくケンカか、戯れでしょう。ちらっと言ってしまうと、ゲカーリング(Gekkering)という行為中に聞くことができます。


・雰囲気!

 こればっかりは、全体的な雰囲気などを見てもらわないといけないのですが……、とにかくしなやかで柔軟性があり、それでいて俊敏です。ネコです。

 あでも、しぐさでいえば「丸い」というのが一つ分かりやすと思います。見てくださいこの丸さ!

https://sakekurage.com/wp-content/uploads/2019/01/DSC_0647-1024x789.jpg(3)

http://fox-info.net/wp-content/uploads/2019/12/20190204_115305_foxinfonet-768x513.jpg(4)

https://takahshi.net/wp-content/uploads/2016/02/DSC_0424-768x509.jpg(5)

 こんなクッションがあったらもう何もいらないですね。ちょっと前に「人をだめにするソファ」みたいなのがありましたけど、キツネの場合は全生物を骨抜きにするクッションという感じでしょうか。生まれてきてくれて本当にありがとうございました。



〈イヌっぽさ〉

 私がキツネにもっともイヌ!!!という印象を受けるのは交尾です。イヌ科動物は挿入後に陰茎根本の海綿体が急激に膨張し、抜けないようになります。そこで、二匹は互いにお尻をつけて反対方向を向き合います。交尾結合と呼ばれるこの状態は、まさにイヌ科ならではです。ちなみにキツネの発情期はおおよそ冬で、すでに冬毛に換毛しているため、もっふもふのペアが抱き合うことになるんですよ! もうその姿は並大抵のかわいさ抵抗力では太刀打ちできないくらいになっています。一応そのお写真もこちらに載せておきます。破壊力が尋常ではないので、心してみるようにしてくださいね!

http://fox-info.net/wp-content/uploads/2018/01/20170211_144745_foxinfonet.jpg(6)



 キツネの特徴を一通り見てきましたが、やっぱりネコ的な要素が強いことがわかりますね。ではなぜキツネはネコっぽいのか、ということになりますが、それは彼らの主たる獲物がネズミだからだろうと考えています。D・マクドナルド氏は著作の中で獲物がネズミであることをオオカミとキツネの行動体制に絡めて話していまし(7)が、つまり「静かに、俊敏に」小動物のネズミを追う必要性に追われて、キツネはイヌ科でありながらネコ科動物のような特性を備えていったのでしょう。


 まとめると、キツネ(主にアカギツネ種)はイヌ科の動物でありながら必要に迫られネコ科的な特徴を身につけた種で、基本的な生態はネコ科的でありながら、交尾など、変える必要のないものはいまだにイヌ科的特徴を持っている、といえます。

 結果的に、キツネはイヌ科・ネコ科双方の特徴を持っていて、それゆえイヌ的・ネコ的というような尺度ではなく、「キツネらしいか」という尺度をあてがうことが正しいということがわかりました(なんか今回は真面目にまとめられましたね!)。




・参考資料

(1)「狐や猫の目の仕組み・不思議:縦に長い瞳孔」参天製薬HP<p.54 永野為武『さまざまな視覚の世界』

(2)「きつねの鳴き声」youtubeより

(3)【感想】宮城蔵王「キツネ村」でモフモフ抱っこ体験|営業時間・料金・アクセスまとめ ゆるくら https://sakekurage.com/miyagi-fox/

(4)『タグ Contains Text 丸まる』の検索結果 キツネ写真館 http://fox-info.net/page/2?f1%5B0%http://fox-info.net/page/2?f1%5B0%5D=%E4%B8%B8%E3%81%BE%E3%82%8B&wpcfs=preset-05D=%E4%B8%B8%E3%81%BE%E3%82%8B&wpcfs=preset-0

(5)【感想】コンコン楽しい「宮城蔵王キツネ村」は、死ぬまでに絶対行くべきモフモフの楽園だ! 能ある鷹h氏 https://takahshi.net/travel/fox-village

(6)「キツネの交尾」タグ : 交尾結合 キツネ写真館 http://fox-info.net/fox-photo/archives/tag/%E4%BA%A4%E5%B0%BE%E7%B5%90%E5%90%88

(7)p.13キツネとの出会い デヴィッド・マクドナルド『野ギツネを追って』

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