4.キツネの語源
キツネ。かわいいキツネ。嗚呼キツネ。キツネキツネキツネキツネ狐きつね。
……オホン。さあ、こんなにキツネキツネ連呼している私ですが、実はキツネの語源を知りません。というか知ることができない、と言ったほうが正しいでしょうか。
そうです、もうすでに、現代に生きる私たちにキツネという語の正統な語源を知ることはできないのです。語だけは伝わっているけど、その起源がわからないなんて、ちょっぴり心悲しいですね。
しかし、(もうすでにキツネの語源がわからなくなっていた時代の)先人たちはその頭脳と古代人的発想を振り絞り、いくつもの候補を出しています。そこで、私はその語源憶測をまとめ、提示し、考察してみようと思うのです。とても無機質で、いつになくツマラナイ回になりそうですから、興味のある方だけ読み進めてくださいね。
〈語源たち〉
一『語源辞典 動物編』:1
2漢語(狐)も鳴き声に由来か。
3またキツネは寝たふりをするので、「仮之寝」で「ケツネ」としたということが語源とも言われるが、これはその後の解釈のように思われる
二『日本語源広辞典』:1「キツ、クツ」(鳴き声)+ネ(接尾語、犬 inu.nu.ne)か。
三『日本語源大辞典』:1キツはその鳴き声から。稲荷神の使いとされていたから、ネは尊称の接尾語か(『大言海』より)。
2キは「臭」、ツは助詞、ネはヱヌの転(『東雅』より)
3黄猫の転(『和訓栞』より)
4毛が黄色であることから黄恒か。
5息を切らさず逃げるから、
6化似か
15「狐」の
四(おまけ)『狐の文学史』:1男が旅先で一人の女性に出会い、二人は同棲してやがて子をもうけた。その家には犬がいて、ある時犬が女に噛みつこうとしたので女はビックリしてキツネの姿になって垣根の上に登った。その後、キツネは男の説得もあって夜な夜な来て共寝した。それで狐(
〈考察〉
まとめると上にある通り、様々なバリエーションが見られます。これを整理しますと、おおよそ
Ⅰ型-鳴き声によるもの 一1・一2・二1・三1
Ⅱ型-行動・見た目によるもの 一3・三3・三4・三5
Ⅲ型-説話・伝承によるもの 三6・四1
Ⅳ型-その他 三2
という三つに分けることができます。辞書の並び、またその数の多さを見る限り、今のところ有力な語源はⅠ型となっているようです。古代日本人は特徴的な鳴き声に目をつけることが多いため、「カアカア」となくカラスや鈴の音のような音を響かせる鈴虫など、鳴き声を名前に入れたものが多々あります。そういうことを考えますと、やはりキツネの「キツ」あるいは「キ」という部分は鳴き声からきているのではないでしょうか。
となると「ネ」が問題になってきますが、これはそれぞれの説に面白みがありますね! 例えば二1ではイヌが変化してネになったとか、また三1ではキツネは稲荷神の使いとされていた背景を考慮して、尊称の「ネ」をつけたのではないかとあります。
ただし、三1は少し考えていかなければなりません。もともとキツネは語が成立する前は「キツ」とだけ呼ばれていまし
逆に最も信憑性が低いのはⅢ型ですね。三6はそもそも伝承に入れていいのか微妙なので飛ばしますが、四1は紛れもなく創作としての語源でしょう。しかも神話などの起源説話ほど語源に重点を置いていないので、言葉遊びの類いだと思われます。これは有名な例だと『竹取物語』にあります。
かぐや姫が月に帰った後、帝は不死の薬を「最も天に近い山=高い山」で燃やせと命じます。そこでたくさんの
という具合です。一発で嘘とわかるようになっていて、当時の冗談のようなものとして書かれているのでしょう。
ああ、話がズレてしまっていますね。とにかく、語源は面白いのです。私は一3の寝たふりという生態を反映させた「
実はもっともっと書きたいこともあるのですが、そろそろ飽きてきたし、皆さんも疲れてしまうと思うので、この辺で! 次は鳴き声なんかに着目してみようかと思います。
ではでは
・参考文献や資料
一:吉田 金彦『語源辞典 動物編』東京堂
二:増井 金典『日本語源広辞典』ミネルヴァ書房
三:前田 富祺『日本語源大辞典』小学館
(1)さし鍋に湯沸かせ子ども
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