6・「皮落とし」

友人は頭部だけを残し、地面に横たわる。


いや、それは皮だけ。

上のウエアを含む上皮だけが毛皮として落ちている。


その原因を作ったのは


大量の毛皮を背に積み上げた何か。

は自身で積み上げた毛皮よりも高い腕を振り上げ、友人の皮をつかむ。


…いや、それが本当に腕かどうかさえ疑ってしまう。


鹿の角にも似た、いびつな枝分かれをした腕。


長い腕には無数のあな

そこから鳴り響くブーンという唸り。


散らばる木の実。

そう、これらが食べられないのには理由があった。


木の実を食べる生物はこの山にはいない。

いても長くは居つけない。


当たり前だ。


ここにいれば、によって毛皮にされてしまうのだから。


ブーンという音。

こちらへとがじわじわと近づいてくる音。


背に乗せた毛皮が多いのか、タヌキの皮が滑り落ちていくのが見える。


だが、僕はから目を離せない。

足が動かない。恐怖のせいか動けない。


それは着ている。


キツネも、タヌキも、ウサギも、キジも、テンも、クマも、人でさえも…


冬眠のためか。あるいは元からそういう習性なのか。

ありとあらゆる毛皮を着たはゆっくりとこちらへとやってくる。

数メートルはありそうな巨体を揺らし、僕を着るためにやってくる。


ブーンという音はますます大きくなっていき、僕は目から涙を流す。


…いや、それは涙ではない。

口や目から出たものは赤い。


僕の体から流れる、赤い血液であり…


「これは、山の恵み…だが、これ以上は獲っちゃなんねえ。」


パンッという軽い音。

身体中の血液が蒸発する音。

内臓を含め体の内側が蒸発する音。


僕は伸ばしてくるあなだらけの腕を見つめ、祖父の言葉にこう続ける。


…さもなくば、命を獲られてしまうのだと。

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皮落とし 化野生姜 @kano-syouga

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