私、うさぎ雲に導かれた世界に転生したので、プリンセス修行始めます⁉︎
彰野くみか
第1話 うさぎ雲と夢
むかしむかし、あるところに、いじめられっ子の女の子が居ました。
女の子は頑張っていれば、いつかきっと報われることを知っていました。
だから、諦めずに今日もいじめと戦っています。
ある日のことです。
学校から帰る途中で、女の子は変わった形と色をしている雲を見つけました。
その雲はなんと、うさぎの形をしていて、薄桃色をしていたのです。
女の子は、「不思議」だと思う前に、無意識のうちに、その雲を追いかけていました。
*****
「ん……」
ふと目が覚めて、5秒ほど間が空いた後に、今日もまたあの夢を見たことを自覚した。
毎日見る夢──。
私の大好きな児童書……うさぎ雲の内容。
私は枕元の本棚に手をやり、もうボロボロになったうさぎ雲の本を取り出した。
深い赤色の装丁のそれは、毎日のように開いていて、ボロボロ具合から、かなりの年季が入っているのが一目で分かるほど。
だけど──。
いくら好きな内容だからと言って、子どものころから毎日同じ夢を見るのかな?
私は、この夢になにかしらの意味があるように感じていた。
──毎日見る、うさぎ雲の本と全く同じ展開の夢……。
退屈な午後の授業。
数学なんて、なんのために習うんだろう?
そんな考えても出ない答えと、考えても分からない微分積分の方程式と向き合っていた。
「はぁ……」
思わず漏れたため息とアナログ式の腕時計のカチカチという音が微妙なハーモニーを奏でる。
授業終了まで後、約25分──。
早く解放されたくてそっと目を閉じると、今朝見たうさぎ雲の情景が浮かんで来るかのようだった。
ふと、窓の外を眺めてみると、白いわたがし雲がたくさん流れている空。
歪な雲がたくさんある中、ひとつだけはっきりとした形の雲がふわふわと浮かんでいた。
その雲は流れることなく、その場に佇むかのように、ふわふわ、ふわふわと浮かんでいる──。
私は目を見開き、思わず立ち上がった。
椅子のガタッという鈍い音が、クラス中の視線を集めたが、私は気にせずに教室を飛び出していた。
──無意識だった。
だって、その雲は──……。
うさぎの形をしていたんだから……!!
私、うさぎ雲に導かれた世界に転生したので、プリンセス修行始めます⁉︎ 彰野くみか @Akinokumika
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