鉄の処女

 (...何があった...?)

ダチと肝試しで禁じられた森に来たはいいが

入ってからの記憶がない...気がついたらこの牢屋にいた。

 (くそ...!みんなは何処行った...!)

一人で薄暗い牢屋で周りを確認していると

カツッカツッ

 (足音だ!)

 「おい!ここは何処だ!俺たちが何をした!他のやつらは何処だ!」

俺の部屋の前で止まった。

 「うるさいなぁ...質問ならひとつずつしてくれ...」

 (ガキの声...?)

声の主は決して高くはないが大人っぽい声ではなかった。

 「なぜここを歩いている!もしかしてお前がここの主なのか?!」

あたりが静まりかえった。声の主はぜんぜん答えない。おいっ!と言おうとした瞬間

ドンッ!扉に衝撃がきた。扉の窓からぬっと顔が見えた。その顔の主は白髪で目はとても黒い色をしていた。若く、男とも女とも見える中性的な顔立ちをしていた。

 「質問はひとつずつって言ったよね~~?」

とても歪んだ顔でこちらを覗きこむ。

 「......っ!」

いきなり暗闇から顔が出てきてびっくりしたが、中性的で幼い顔のおかげで冷静さを取り戻す。

 「すまない。ここはどこか教えてくれないか?」

 「ここは黒曜館こくようかん。黒の館とも呼ばれてるね。」

声の主が不機嫌そうに答える。

黒曜館?黒の館?聞いたことない。そもそも俺たちは禁じられた森に入ったはずだ。

 「聞いたことないな......」

 「そりゃそうだ。ここは立ち入り禁止の禁じられた森の中にあるんだから。」

なっ......!森の中に館があったのか?!入ることの許されない森の中に。

 「おまえは山賊かなんかの仲間か?それとも......」

ドンっ!!

話している途中で扉が殴られた。山賊と言われたのが気に障ったのだろうか?慌てて謝罪をする。

 「すまない。何か気に触るようなことを......」

 「おまえ、口のきき方に気をつけたほうがいいよ。君が生きるも死ぬも僕次第なんだよ?」

死ぬ?!冗談じゃない!

 「ふざけんな!なんで死なねぇといけねぇんだよ!」

声の主の顔が歪む。

 「あぁもう、うるさいなぁ!」

ドンッ!

衝撃が走る。

 「?!」

何が起きたかわからなかった。

 「ただの衝撃波の魔法だよ。驚きすぎ。」

ただのって衝撃波の魔法は上位の魔法じゃねぇか!

 「もううるさいから寝ててね。」

ふざ...けん...な...

目の前がぼやけちからが抜け声が出なかった。うとうとし、そこで力尽きた。


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目が覚めると暗闇の中にいた。というより、目隠しをつけていた。

 「あ、目が覚めた?今準備中だからもう少し待ってね~。」

 「ンムム!」

猿轡さるぐつわをつけられていて喋れない。何なんだこの状況!

 「初めて使うものだから少し準備に時間がかかっちゃって。」

何を使うってんだ?

そして猿轡と目隠しがはずされた。そこに広がっていたのは、

 「じゃじゃーん。君のためにわざわざ魔法で作った鉄の処女アイアンメイデンだよ!!」

鉄の処女アイアンメイデン。聞いたことはある。鉄の空洞中に人を閉じ込め、中にある棘で全身を串刺しにするという、恐怖の拷問道具

 「今から君にこれを使い、死んでもらいまーす!」

は?

 「なんで...なんで殺されなきゃいけないんだよ!ただ...ただ領地に入っただけだろ?」

 「君は家にゴキブリが入っても殺さずに逃がすのかい?」

ふざけんな!俺の命はゴキブリ以下かよ!

 「生き物みな命は等しい。君たちが意味もなく虫や動物を殺すのなら、僕は君たちを殺そう。」

なんだよそれ...

 「まぁ、僕が君たちを殺すのはただ殺したいだけなんだけどねぇw」

なんだよ...

 「なんだよそれ!ふざけんな!こんなことで死んでたまるか!」

そうだまだ死ねない。

 「あー、そう。まぁいいや。それじゃぁ行こうか。」

魔法で椅子から体が浮く。そしてどんどん鉄の処女に近づく。

 「やめろ!魔法を解け!」

まだあいつに思いを伝えてないのに!

 「魔法を解けって言われて解く馬鹿が何処にいるの。」

思いを伝えてあいつと幸せになる予定だったのに!

 「やめろ!!!!!!!」

くそっ!こんなことになるなら来るんじゃなかった...

 「それじゃ、お休み~☆」

フローラ...

扉がゆっくり閉まる。外側から棘が刺さっていく。今は痛みも何も感じない。

フローラ...いや...もうどうでもいいk...

ガンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


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扉を閉めた後沈黙が流れる。さっきまであんなにうるさかったのに。

あぁ、さみしいな♪儚いな♪こうも簡単に命は消えてしまう。

おっと、まだ消えてなかったか。

簡単に死なないような棘の配置にしたんだった。しかも声が出せるよう肺とのどには棘が刺さらないようにした。だからこの鉄の処女の口を開けば盛大な声が聞けるはずだ。

 「さて、そろそろ聞きますかね♪」

レバーを引き鉄の処女のくちを開く。すると。

 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」

口を開いた瞬間、部屋いっぱいに苦痛の声が響き渡る。

 「い゛だ い゛い゛だ い゛い゛だ い゛い゛だ い゛い゛だ い゛!!!」

 「あはははははははははははははははははははははははははははははは!!!」

いい!いい、いい、いい!

やはり人の断末魔は心地いい!最高だ!!!

人の断末魔はいい!必死に生きようとしている。なんて美しいのだろう...

どんなに醜い人間でもこの瞬間だけは美しく、そして...

もっとも興奮する。

館の主は満面の笑みを浮かべる。男のあげる断末魔を聞きながら。


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三十分後。

鉄の処女からの声はなくなり、部屋は静寂に包まれる。

 「あぁ、死んじゃったか。」

扉を開き中を見る。

 「うげぇ、気持ちわるぅ...」

中からは体から血や、涙が抜けきった干からびた男が出てきた。

部屋には生臭い鉄のにおいが立ち込めた。

 「はあぁ、もう終わっちゃった。つまんないの。」

館の主は男を軽く蹴る。

 「んん、初めて使ったけどなかなかいいねこれ。」

館の主は鉄の処女をポンポンとたたく。そして悲惨なことになっている周りを見渡す。

 「ただ、片付けがめんどいね。これ。」


館の主は静かに片付けを始めた。


____________________________________________________________________________


 「ふぅ、それじゃ日記を書くか。」

その時館の戸が鳴る。

 「誰だよこんな時間に...」

玄関を開けにいくとそこには赤髪の女が立っていた。

 「よぉ、またやってるのか?」

女は小さき館の主をみて言った。

 「狂気と拷問の魔王、ハルヴァン・ティーナさんよぉ?」

魔王は不気味にほほ笑む。

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楽しい拷問のお話♪ kurimu @kurimukuran

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