あるいは黒澤作品のような情景を想起させる骨太な一作

徹底した俯瞰的な視点で綴られる情景は両者どちらの心情に寄ることは無く、
その場を吹き抜ける風の一部であるかのように話は淡々と進んでいく。
思い起こされる景色は広い画角による広大な薄の原、そしてこれでもかと寄った登場人物たちの瞳。
ソリッドな文体は一切の隙を見せないからこそ、我々読者一人一人の中に自分たちが思い描く往年の名作映画の場面のような臨場感を与えてくれる。
余計な台詞を廃し瞳で語らせるセルジオ・レオーネのように、あるいはその動きにこそ冴えありとアクションに彩りをつける黒澤明のように。
力強さに満ちた内容は、読めば心地の良い侘びしさと無常を与えてくれること間違いなしである。

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