お嬢様と茶髪の男

ユーヤ

うどんとスカイツリー

「こ、これが関東のうどん……」

「随分驚いているようですね。もしかして見るのは初めてですか?」


 太陽の陽光が燦々と降り注ぐ真夏のとある日の昼時間帯、都内某所のうどん屋に二人の人物がいた。

 一人は茶色の髪の顔もそれなりに整った偉丈夫で、もう一人はシックな服を着込み、吸い込まれそうな程の黒髪をした美少女であり、まさしく『お嬢様』といった言葉が似合う様な、そんな少女だった。


 真夏の暑い日に何故うどん屋にーしかもあったかいかけうどんを注文したー駆け込んだのかは疑問だが男の方がそこに行くことを所望し、少女の方もやぶさかでは無かったので行く事になったのである。


「えぇ…見ることも食べる事も初めてですわ」

「じゃあ冷めないうちに食べましょうか」

「そ、そうしますわ!」


 二人はいただきますをして、出来立てのかけうどんを食べ始める。

 そしてうどんを口に入れた途端、目を見開く。余りにもうどんが美味だったからである。


「う〜ん、久しぶりにここのうどんを食べましたがやっぱり美味しいですね。ん? 何やら驚いた顔をしていますね…もしかしてお口に合いませんでしたか…?」

「逆ですわ! 鰹出汁がベースとなったつゆとコシのあるうどん、全てが調和しておりとっても美味しいですわ! 東京にこんな美味しい物があるなんて…びっくりですわ!」

「ふふっ、大袈裟ですね」

「それぐらい美味しいって事ですわ」


 その後も二人は和気藹々とうどんを食べ進めていき、しばらくして完食した。


「ふ〜、食べましたわ。もう満腹ですわ」

「それじゃあ、食べ終わった事ですしそろそろお暇しましょうか」


 そして、二人はお会計を支払い、店を後にした。


「昼食も済ませましたし、次はどこにいきましょうか?」

「う〜ん、あっ! あそこに行きたいですわ」

「あそこと言いますと…?」

「スカイツリーですわ! スカイツリー。東京に来たからには是が非でも行きたかったところですわ」

「そうなんですか…ではそこに行きましょうか」


 この様なやり取りを経て二人はスカイツリーに向かう事になった。


「ここが天望回廊…ものすごく高いですわ…下にある物がとても小さく見えますわ」

「当然でしょう、天望回廊はなんと高さ450メートルのところにあるのですからね」

「そんな高いところに!?」

「あ、そうだ。下を見てください、面白い物が見れますよ」

「面白いもの…? わっっ!?」


 下を見てみると、そこは床が普通の床ではなくガラスの床になっていたのである。つまり450メートル下まで完全に透けているのだ。


「騙しましたね!?」

「あはは!引っ掛かりましたね。凄く驚いた顔をしてましたよ」

「笑わないで欲しいですわ…」


 そんなやり取りをした後も二人は水族館などを回ったり、一緒にレストランで夕食を取ったりと、とても楽しい時間を過ごしたが、やがて日が暮れて、帰路についた。

 帰路の途中も様々な会話をし、盛り上がった。

 そして二人は駅に到着した。


「今日は遠路遥々大阪から遊びに来てもらいありがとうございました。東京はどうでしたか?」

「とっても良いところでしたわ」

「ふふ、それは重畳です。私はいつでもあなたを歓迎しますよ」


 そして新幹線に乗り込み言った。


「必ずまた来ますわ、ほなまた! 嬢ちゃん!」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

お嬢様と茶髪の男 ユーヤ @yozakura-san

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ