第39話

 わしがクリスさんの屋敷に駆け付けた時、グフトのいう通り危機一髪だった。

 クリスさんに少しだけ似た男は、クリスさんに襲い掛かっていた。

 以前見たクリスさんの傅役と側近が血を流して倒れている。

 よくここまで思い切った事ができたな。

 よほど追い込まれて自暴自棄になったか、御当主まで既に暗殺しているのか?

 だが今は考えている時ではなく、戦う時だ!


「止めよ、逆臣!

 主家を襲うとは何事か!

 恥を知れ恥を!

 クリスさん、眼をつぶれ」

 

 威圧を込めた一喝を逆臣共に叩きつけてやった!

 部屋に突入した勢いを殺さず、そのままグレートソードを振るって、クリスさんの従兄だという腐れ外道を叩き斬ってやった。

 少々の治癒阿魔法では治らないように、蘇生魔法でも失敗するように、頭にグレートソード叩きつけて粉砕し、そのまま脛骨から背骨を粉砕しながら、身体の中央部の肉を叩き潰しながら、左右に両断してやった。

 クリスさんがわしの言う通り、目をつぶったのを確認してからやったから、凄惨な現場は見なくて済んだだろう。


「治癒!」


 あまり得意ではないが、治癒魔法で傅役達も助けておこう。

 恩を売るつもりはないが、クリスさんとの結婚の味方になってくれたらうれしい。

 実際問題、グフトをわしの所に送って来るくらいだから、嫌っているという事はないだろう。

 むしろ信頼してくれていると考えてもいいくらいだ。


「死ね逆臣!」


 ここまで来たのだから、逆臣共は皆殺しにしておこう。

 わしの剛剣に剣を合わせてきた!

 家臣共では相手にならず、剣術指南役かその弟子が相手してくれないと、本気の実戦練習すらできなかったわしの剛剣を!


 だが技はあっても力が足りない。

 圧倒的に足りない。

 受けた剣は普通の剣だ。

 名刀と呼ばれるくらい高価な剣のようだが、厚みも刃渡りも全く足りないのだ

 わしの圧倒的なパワーを受けた、長く厚く幅の広いグレートソードを一撃を受け止めるには、脆過ぎた。


 わしが放った剛剣は、逆臣の剣をへし折り、そのまま胴を両断した。

 こいつも生き返らないように、返す剣で頭から叩き斬ってやった。

 つまり左右上下、十字に斬り分けてやったのだ。

 そのままその場にいる逆臣共を皆殺しにしてやった。

 首魁を殺したのだから、走狗は見逃してやれというモノもいるかもしれないが、クリスさんを襲った奴を許せるほど、わしは人間ができておらんのだ。


「クリスさん。

 このままわしの家に行こう。

 クリスさんをここまでの危機に陥らせるような家臣は信用できん。

 わしを信じて一緒に来てくれるか?」


「はい!

 どこまでも一緒に行きます」


 この後どうなるかは分からんが、昨日言った人の道など、もうどうでもいい。

 クリスさんがまた襲われるかもしれないと思うと、苦しくてたまらん。

 何があってもクリスさんを護る。

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伯爵家公子と侯爵家公女の恋 克全 @dokatu

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