これは壮大なオープンワールドを旅する白と黒の少女の物語。
黒の少女は最強の巫女。世界救済の旅に出ます。
白の少女は幼馴染みの黒の少女に随行しますが、旅の初めはまだ何者でもありません。
果たして白の少女は旅の間にどのような成長を遂げていくのでしょうか…?
まず読み始めて感じるのはその世界観の壮大さです。昨今は美しいオープンワールドが舞台のゲームが流行っていますが、文章でそのような世界観を表すには語彙力と筆力が問われます。この物語はそれを見事クリアーしていて、読む者を魅了していきます。
そして読み進めていくと、冒険に必要な強さとは何なのだろうと考えさせられます。強いとは一体どういうことなのか、そして強さは本当に必要なのか、と。単純な乙女の成長物語と思って読み進めるとその先に待つ運命に驚愕します。表現力だけではない、ストーリーテリングの妙にハマります。
この作品を読み終えた後には、きっとあなたも映画館で壮大なスペクタルファンタジーを観た時のような恍惚感に因われていることでしょう。
本当は公開されている分を全部読んでレビューをしようと思っていたのですが、第3章まで読了した時点でいてもたってもいられず書くことにしました。
貴族ホーリーデイ家の令嬢レイネリア。彼女の家は代々、半神半人の天人地姫を庇護しその旅立ちを見送る役目を持っています。一方、当代の天人地姫ミストリアは、たった一人で王国の軍勢を相手取ることができるほどの凄まじい力の持ち主です。
天人地姫の御幸―世界の果てへの旅立ちの日、神にも等しい力を持つ天人地姫ミストリアには同行者など足手まとい以外の何物でもない、それでも彼女と一緒にいたいとレイネリアは陪従を申し出るのですが……
他の方もレビューで書かれているとおり、素晴らしく磨き上げられた文章によって重厚な世界が圧倒的な説得力をもって迫ってきます。長い歴史を背景とした国と国との関係、家と家との軋轢、人と人との結びつき、まるで見事な織物のように編み上げられた世界の中を少女二人は最果てを目指して歩んでいきます。
上質なファンタジー映画を見ている時のような没入感。彼女達の旅を見届けるのはまだまだ先になりそうですが、それはそれだけ長く楽しめるということ。ぜひ多くの方に手に取っていただきたい作品です。