エンディングゥゥゥウウッォォワアアェエッ!

「弾道はこうでやすよ。sideAが90°上昇。sideBが180°平行移動。sideCが45°右舷から。sideDが同角度で左舷から」

「うむ」

「してぇ・・・ジェットがこう・・・くるん、と」

「なんだ、くるん、て」

「ですから宙返りを」

「アホかあおのれは!ジェットが宙返りなぞ失速するわあっ!」

「ビッチちゃん、どうしてわざわざ宙返りをぉ?交錯ポイントの加減?」

「いえね。アートの問題でやすよ。その方がカッコよく回避できるでやすよ」

「来ました」

「えーい!もう検証する間もない!機長!できるかっ!?」

「そうねぇ・・・できそうには思うけどぉ」

「何だっ!」

「ご褒美がぁ、欲しいわねぇぇ」

「3億じゃ不満かっ!」


 え?

 3億?


「ちょいちょいヘッド」

「なんだビッチ」

「億、って報酬でやすか?」

「だったらなんだ」

「ビッチちゃぁん。ヘッドが5億ぅ、アタシが3億ぅ、副機長とビッチちゃんがぁ1億ずつぅ、締めて10億円よぉ」


 じゅ、10億円!?

 んで、わたくしが1億円!?


「でもぉ、ジェットの宙返りなんて死ぬからぁ。3億でもちょぉーっとねぇ」

「えーい、分かった!俺は2億でいい!お前ら3人1億ずつ積み増せい!」

「いぇあ!生きる希望が湧いてきたわぁ!じゃあぁ、行くわよぉ!」


 むーん。

 2億2億2億2億っ!

 成功したら2億と命があ!


「副機長!曲のヴォリューム上げい!」

「はい」

「ノってきたノってノってきたでやす!踊れ踊れ踊れ踊れぇっ!」

「くっそー!手足よ、もっと動かんかあ!」


 ぅぅぅぅぅうううううわああぁぁぁぃぃぃ!


「ぎゃっ!」

「痛っ!」

「おえぇぇぇ・・・」

「これはぁ・・・酔うわねぇ」


 き、気持ちわりー!

 吐きそうーっ!


「ミサイルは!?」

「クロスするっ!」


 チチチチチチチチチチ・・・


 ドォォオオオーーーン⚡︎⚡︎⚡︎!!


「よーし!」

「敵機反転。諦めたようです」

「やったでやすー!2億えーん!」

「あらぁ」

「どうした機長?」

「右側のエンジンが、無いわぁ」


 はあ?


「おいおいおいおい!エンジンどころか右翼がエンジンの部分から先全部消えてるぞ!」

「爆風でやられちゃったわねぇ」

「どうするんだ!?」

「どうもこうも無いわねぇ」


 ええ?

 死ぬんでやすか?

 落ちて?


 ・・・・あんまりでやす。

 そりゃあわたくしは一見ヘラヘラヘラヘラして媚び売ってその場を凌いで生きてるように見えるでしょうけど、ほんとはこんなの嫌でやすよ。

 体操服なんかじゃなくて、きちんとした女子の制服が着たいでやすよ。

 一度でいいから汚物処理の命令から解放されて学校帰りにカフェでも寄りたいでやすよ。

 できることなら手頃な男子と告白ごっこでもしてみたいでやすよ。

 はあ・・・・


「ビッチ殿」

「?なんでやすか、副機長?」

「空気を逸らせませんか」


 はっ!

 うわぉ!

 おお!


「そのテがあったか!」

「ほぉんとねぇ。それがいいわぁ」

「いやー、一時はどうなるかと・・・」


 う・・・ん?

 なんかものすごーく論理に飛躍があったような気がするけどでもまあそんなもんでやすかねえ。

 じゃあ、ちょっとやってみるでやすか。


「えい」

「ビッチちゃん頑張ってぇ」

「えいえい」

「ビッチ殿、ファイトです」

「えいえいえいえい!」

「気張らんか!ビッチ!」

「えぇえええい!」


 ゴウン!


「やりました!水平気流の間に挟まりました!滑走路はもうすぐです!」

「おお!あれが巴里の灯か!」


 タイヤが出やした。

 多少アンバランスでゆらゆらの飛行でやすけど、シャルル・ド・ゴール空港の滑走路に、今!接地しやした!


「待て!なんだあれは!?」


 あれは・・・・・・


「象です!インド象です!」

「なんであんなところにインド象が・・・」

「ヘッド。それはねぇ。はるか東方の国を目指して出発しようとしていたサーカス団が空輸する予定だった象が滑走路内で脱走したのよぉ。多分」

「機長!こんな時だけ理路整然と述べるなあ!」

「ぶつかるぅぅぅ!」


 ああ。

 5頭も走ってる。

 無理だ。


「ビッチ!逸らせいっっっっ!!」

「えーーーーーーーーーい!!」


 ぱおーん!


「よ、避けた!象の方から!」

「エレファント!」

「なんのギャグだ」

「え、エクセレント・・・いや?エレガント?」

「だ、ダジャレ・・・この、命の、刹那に・・・」


 ・・・・・・・・・・・・・・・


「いやあ、総員、ご苦労であった!」

「あぁ・・・染みるわねぇ、ワインてぇ」

「機長がワインなんて珍しいな」

「あらぁ、ヘッドぉ。郷に入っては郷に従え。パリならワインでしょぉ。いっつもいっつも焼酎かっ喰らってるわけじゃないわよぉ」

「ビッチ殿。ささ、おひとつ」

「あ、ありがとうでやす、副機長」

「ところで。みんなこれからどうするんだ」

「そうねぇ・・・また航空会社に戻るのもなんかねぇ」

それがしは機長の行く道をフォローいたします」

「ビッチはどうする?」


 わたくしでやすか。

 わたくしは・・・・・


「あの。提案なんでやすが」

「何だ」

「なあにぃ?」

「なんですか、ビッチ殿」

「この四人で運送会社、作りませんか?全員で貰う10億を資本にして」


 ららら。みんな、固まっちゃって。

 はは。

 そうでやすよね。わたくしは誰も触れぬばい菌でやすから・・・


「いいぞ」

「いいわねぇ」

「ビッチ殿、やりましょう」

「え!?」

「何を驚いているのだ」

「だ、だって、ヘッド。わたくしは友だちがひとりもいない、ろくでなしでやすよ」

「何を言っておる。この四人は友達ではないのか?」

「ビッチちゃぁん。もう媚びたりしなくていいのよぉ。アナタは最高なんだからぁ」

「ビッチ殿。末長くよろしくお願いいたします」

「み、みんな・・・」


 ああ・・・

 なんか、いいでやすね。

 青春と友情と愛情がいっぺんに降ってきた感じでやす。


「それで?会社名はどうするのだ、ビッチ」

「ええと・・・・」


 はっ。

 そうか。


「『ヴァージン・トランスポート』とか」

「パクリかよっ!」



 おしま〜いぃぃ


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ビッチよ、女神にひれ伏せい! naka-motoo @naka-motoo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ