第11話@新城家の人々
新城奏。この町の有力者、新城晶市議会議員の一人娘、であるはずだ。先代の地盤を受け継ぎ、三期にわたって議員を続けてきた新城家の人々。娘の新城奏は異色のようで音楽に精を出しており、そういった娘の様子について、親である晶は心配している…。
「なぁ、翔?なんか最近ぼーっとしてること多くないか?」
「ちょっと考え事な。まぁ、心配しなくてもいいぜ。」
「心配しなくてもいいかもしれないけど、ライブのたびにネタのキレが落ちてる気がするのは気のせいか?」
「さすが、実朝。いい気づきだ。ネタが尽きてきてるんだ…。」
「やっぱりそうだよなぁ…。思い切ってライブの頻度上げてみることを提案してこのざまだからな…。」
「確かに。ちょっとずつ見物客減ってきてるよなぁ…。えぇっと…、今日来ているのは…、いつものショートカットの女子大生とその友人数人、パーカーの男性数人とスーツを着ている男性数人ってところか…。あっ、あとこの間警察署であった二人もいる。」
「スーツを着てる男性ってスカウトなんじゃ?」
「いやいや、何か全然違う、違う殺気を持っているように感じる。なぁ、唯?」
「確かに…。ただ事じゃないなぁって感じはすごいする。」
「まぁ、俺たちは俺たちのスタイル貫いて頑張っていこう!」
「おう!」
唯の「おう」でライブは始まる。
始めの合図とともに漫才からスタートする、はずだったがそこに黒い大きなボックスカーがやってきた。どうしたことやら。
「すいません、住谷翔さんいらっしゃいませんか?」
「住谷翔?僕ですけど…。」
ボックスカーから出てきた極めて偽善ぶっている絵にかいたような紳士が出てきた。唯と実朝もじっとこの男を見つめていた。
「おっと、ライブを止めてしまったのなら申し訳ない。若者文化の大切な活動ですから。」
唯が切り出してライブが始まった。
「ね、すごい権力者みたいな方からお墨付きをいただいてねぇ、始めさせていただきますけれども。まぁ、私たち、今年で二年生になるわけですけれども。」
「実感がわきませんよねぇ。あっ、でもこの間道路使用許可を取りに行くときに遭遇した二人組がいるんですけども、その二人組が僕らのファンだって言ってくれて、すごい嬉しいんですよ。」
「そうですよ。せっかくだったら舞台上上がってきてもらいますか?ほら、そこの二人?」
え?私たちのこと?みたいな目をしながら平川菜名はまるで小動物みたいな感じで小走りでやってきた。新城奏はというと、かなりゆとりのある感じで前へやってきた。
「奏?!」
ボックスカーの主、声をかけた。
菜名が新城奏に声をかけた。
「ねぇ、お父さん、声かけてるんじゃ?」
「晶さんでしょ?あんなの父親とか思ってないから。」
その瞬間の奏の表情がずっと心から離れなかったが、無事に漫才を終えた。
アコースティックなポン酢路上の音楽話 西野結衣 @yui_nanase
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