第10話@話せばわかる
「中山さん、お話ありがとうございます。」
「これを話すこと自体も前の施設ではどうしようか、会議にかけられるようなことだったの。けど、高校生って社会に向けての一歩を踏み出さなきゃいけない。社会に出たらそういうことを言って近づいてくる人がいるかもしれないって思ってね。」
自分の親を突然名乗って近づいてくる大人、もうそれだけで危険な予感しかしない。けれど、この時の僕は判断に迷っていた。分からない問題があれば早めに諦めてできる問題から解いていく、受験専門みたいな高校である僕たちの先生が言った。鉛筆転がすのも一つ、手だと。
これは鉛筆を転がして考える問題なのだろうか。分からない…。まぁ、一つ言えることは今の生活を壊したくない。バンドを組んでるくせにどうしてこうも、僕には野心がないのだろう。野心…。
やけに夜が長く感じられた。
朝、4時30分、一本の電話がかかってきた。平川菜名…。そういえばこの間、警察署で会った後輩か。こんな朝早くに電話を掛けるとは、なんとも礼儀がなってないのであろうか…。
「どうした?後輩さん?」
「後輩にさん付けするだなんてやっぱり育ちがよさそうですね。」
「それ本気で思ってんのか?」
「ところで本題なんですけどね。」
「うん、人の話聞かないタイプね。」
「先輩の話なら聞きますよ?なんてったって、ポン酢の電話番号ゲットしちゃったわけですからね。」
「まったく…。まぁいいけど、育ちがよさそうってのは随分と誤解だな。」
「そうなんですか?」
「俺はな…」
「おっ、俺様男子発動ですか?」
「おい、電話切るぞ?」
「冗談ですよ。」
「育ちがよさそうだって思ってるのは世間を知らなさすぎだ。本当に恵まれない奴なんか、この世にはそうはいねぇんだよ。」
「先輩は恵まれない側ってこと?」
「あぁ…。これを言ったらたぶんいろんなところで言われ続けるから隠してたことがあってな。」
こうして僕は今までの経緯を話し始めた。
「大変だったんですねぇ…。ところでセンパイ?」
「お前、聞く気ねぇだろ?」
「奏知りません?」
「奏…、あぁあの時の一緒にいた割と無口な方。」
「無口って…。奏のお父さん、急に最近変なことを言ってたらしいんですよね。で、相談してきたんですけど、なんか口堅そうでしっかりしてそうな先輩に相談してみようかなぁって。」
「まぁ、お前は口柔らかそうだな。」
「口柔らかいなんて女子に言うときはキスの時だけですよ」
「・・・。」
新城奏…だったよな?
新城って言ったらあの、父親だって話してたあの男も新城だった気がする…。
嵐の予感、こういうドラマティックな展開、作者は好きだなぁ…。
「あっ、先輩、そういうのダメでした?」
「いや、別に。」
「じゃぁ、黙らないでくださいよ。」
ちょっと気になったことがあっただけ。
次に語られたことによって、電話の画面が砕け散ることになる…。とまぁ、次回に期待させるようなことでも言っておくとしよう…。
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