第2話(ネタバレあり! 注意!)
※注意:このエッセイには「スター・ウォーズ エピソード9 スカイウォーカーの夜明け」のネタバレが含まれます。ご注意ください。
もう一度警告します。このエッセイには「スター・ウォーズ エピソード9 スカイウォーカーの夜明け」のネタバレが含まれます。まだ映画を見ていない方は速やかにこの画面を閉じる、もしくはブラウザバックすることを推奨します。
さて、「スカイウォーカーの夜明け」では、レイがパルパティーンことダース・シディアスの孫であり、パルパティーンと引き離すために両親によってジャクーヘ置き去りにされたことが明かされました。
そんなレイですが、祖父の道であるシスではなくジェダイの道を選びます。従って、悪の枢軸であるシディアスと対決するのは自然の流れでした。
この映画で感銘を受けたのは、レイとダース・シディアスの対決が極めて巧緻にデザインされており、一つ一つに解釈を持たせることが可能だと言うことです。
もちろん、現実の戦闘ではあり得ない不自然な流れなのですが、そこは映画なので目をつむりましょう。
まず、一番最初にレイとダース・シディアスが対峙したとき、シディアスはレイに対して「自分を殺して女帝になれ」と脅迫します。これは、レイがパルパティーンの孫であり、自分自身をレイに殺させることによって、パルパティーンというダークサイドの血筋を継承させることが目的でした。
レイは、この時点ですでにデッドロックに陥っています。
映画の中でも言及されていましたが、レイがシディアスを倒せば自分が「レイ・パルパティーン」として生き残り、パルパティーンというダークサイドの血筋が生き残ってしまいます。しかし、シディアスを殺さないという選択肢を選べばシディアスが生き残り、やはりダークサイドは健在と言うことになってしまいます。
これでは、ダークサイドを滅ぼしたい(正確には調和をもたらしたい)ジェダイは何も出来ません。この時点ではシディアスの完全な勝利です。この時点では。
実は、『もう一つの選択肢』があります。それは、レイがシディアスを倒して自分も自殺するというものです。
こうすればレイもシディアスも死んでダークサイドは滅ぶ! やった!
と、思われるかも知れません。
しかし、レイは『もう一つの選択肢』を取りません。と言うか、取れません。なぜなら、カイロ・レンがダークサイドからライトサイドへ帰還してベン・ソロに戻ったことをレイはまだ知らないからです。つまり、レイとシディアスの両方が死んでも、カイロ・レンがカイロ・レンのままである限りダークサイドが生き残るので、そう思い込んでいるレイにはできないのです。この時点では。
このデッドロックを破ったのは、言うまでも無くベン・ソロです。ベンはレイからライト・セイバーを受け取ると、ライトサイドへの帰還を行動によって宣言します。
実は、ベン・ソロが登場した時点で、私はレイの死を予想していました。だって、二人が死んだらベン・ソロ(彼はレイアの息子=スカイウォーカーの血筋)が生き残って、まさしく「スカイウォーカーの夜明け」でめでたしめでたし……と、一応筋が通るからです。
さて、レイがここで『もう一つの選択肢』を発動できるかというと、実は難しかったのかも知れません。確かに、ベン・ソロさえ生き残れば表面上はダークサイドを滅ぼしたことになります。しかし、彼が再びダークサイドに落ちる可能性はゼロではありません。ベン・ソロが秘める『内なる』ダークサイドが存在している以上、『完全に』滅ぼしたとは言い切れないのです。
この可能性を、映画を見ている間の私は見落としていました。
さて、ここでこのバトル最大の分岐点がやって来ます。ダークサイドの転向を拒否した二人に怒り狂ったシディアスが、レイとベンのフォースを吸い取ります。
もう少し表現を変えて言います。
レイとベンが持つ『ダークサイド』のフォースをシディアスが全部吸い上げました。
そうなんです。
きれいなジャイアンならぬ、『きれいなレイ』と『きれいなベン』がここに誕生したのです。
何故そう言い切れるかというと、フォースを吸い取られてもなおレイたちはフォースを使えたからです。このフォースはライトサイドのフォース以外に考えられません。
強大なフォースを手に入れたシディアスは、なぜかベンだけをフォースでぶっ放します。この不自然なアクションがなされた時点で、私はレイの死を確信しました。
あ、彼女は間違いなく死ぬな。ベンの生き残りフラグ確定だな。
そう思いました。
ただ、釈然としない。もし本当にこのままレイとシディアスが死んでしまったら、物語として死んでないか? なんの感慨もないエンディングを迎えてしまうのではないか……?
そんな不安が頭をよぎりました。杞憂でしたけど。
しかし、二人から生気を吸い取ったのは、ダース・シディアスの人生史上最大の悪手でした。何故なら、自らにダークサイドのフォースを一点集中させてしまったことにより、レイのデッドロックが完全に解消されてしまったからです。
シディアスを倒せばダークサイドは滅ぶ。レイ自身が死ねば、パルパティーンという血筋も途絶える。
レイが二本のライトセーバーを持って行動に出たのも、この確信があったからです。フォースライトニングで対抗するシディアスに、一歩ずつ、一歩ずつ近づいていくレイ。そんな彼女に、歴代ジェダイたちからの言葉が響きます。
Rise.
副題にも含まれている英単語ですね。ただし、ここは名詞では無く動詞で使用されています。
フォースの霊体化に成功していないジェダイたちの声まで響いたのが不自然だと思われる方もいると思いますが、私はダークサイドが完全に取り払われてライトサイドのみが凝縮された今のレイだからこそ、かつてライトサイドの守護者であったジェダイたちの声が聞こえたのではないかと考えています。
なにせ『きれいなレイ』ですから。
はっきり言って、私はこの時点で涙してましたね。シスの討滅はジェダイの宿願だったのです。その達成に唯一目前まで迫ったメイス・ウィンドゥの声が聞こえたときには、もう感無量でした。
嗚呼、これでサミュエル・L・ジャクソン……もとい、メイス・ウィンドゥの宿願が果たされる、と。
シディアス自身のフォースライトニングを跳ね返して倒すというこの方法は、エピソード3のオマージュと言うよりこれしかシディアスを倒す方法はないな、と思いましたね。
私にとってはそれほど説得力のあるシーンでした。
さて、シディアスを倒したレイですが、どうやらフォースを使い切ったらしく、予想通り死んでしまいました。
嗚呼、このままベン生存エンドで終了か……。無駄な映画だったな……。
そう思った矢先、ベン・ソロが驚愕の行動に出ます。なんとフォースでレイを蘇生させ、レイとキスを交わすとそのまま帰らぬ人に。
これにもきっちり解釈を与えることができます。
まず、レイが一旦死んだことによって「パルパティーンの血筋」が完全に息絶えました。ここが重要です。パルパティーンは最早銀河には存在しません。
巷では、「ベンがレイを生き返らせた。そのためにフォースを使い切って死んだ」という解釈が主流のようですが、私は違う意見を持っています。何故なら、ベンごときが(失礼)人を生き返らせることができるのであれば、ダース・シディアスがとっくの昔に達成しているはずです。
付け加えると、もしシディアスがフォースによる生命の操作という秘技を獲得していれば、対決の冒頭で「私を殺して後を継げ」なんて言いません。
と言うことで、私は以下のように解釈しました。
ベンはレイを生き返らせたのではなく、ベン自身のミディクロリアンをフォースによってレイに移した。従って、レイ(パルパティーン)のミディクロリアンは消滅しているが、スカイウォーカーのミディクロリアンはレイに受け継がれた。ベンは共生関係にあったミディクロリアンを失ったのだから、生命のバランスを崩して死に至るのは当然の帰結である。
ベンはレイになり、レイはベンになったのです。
ここに、二人の奇妙な縁は収束しました。
こう解釈することによって、まさにレイ自身がスカイウォーカーのフォースを獲得し、新しいスカイウォーカーの仲間入りを果たしたことになります。最後のシーンで「私の名前は、レイ・スカイウォーカーである」と名乗ったのは全くもってその通りとしか言い様がなく、また、最後に出てきたのがルークとレイアだけでベンが出てこなかった理由も完全に筋が通ります。だって、ベンはレイの中にいますし。
一点だけ難癖を付けるとすれば、なぜベン・ソロが死ぬ必要があったのかという点ですね。自分を犠牲にしなくても、あの時点でダークサイドの消滅とライトサイドの勝利は確定していました。
まぁ、贖罪ですかね。
散々レイをダークサイドのフォースで苦しめてましたし。
私はそういう解釈にしておきます。はい。
さらにぶっちゃけると、あそこでベンが自己犠牲の精神を発揮しないと、お涙頂戴の展開に持って行けないという……あ、言い過ぎました。ごめんなさい。
なお、ベンがレイのお腹に手を当てていたことから、「シミ・スカイウォーカーのときと同じように、フォースによってレイが妊娠した」説もあるようですが、私は上記と同様の理由(ベンごときが生命を生み出せるほど強力なフォースを持っているとは思えない)で棄却します。
最後のシーンに関しても、別に結婚を経ず姓を変えることに異議はありませんが、ちょっとしっくりこないんですよね。
ただ、一ファンとしては面白い説だと思います。私がベンを過小評価しすぎている可能性も十分ありますし。
いろいろ書いてきましたが、なんだかんだ言ってエンドロールでは涙腺崩壊。キャリー・フィッシャーの名前が一番に出てきてさらに涙が増量しました。
自分の予想が覆され、ベンが死んでレイが生き残る。多分、私がこの映画を面白かったと感じたのはこのせいでしょう。
フィンがレイに言いかけたことがなんだったのかとか、ランド・カルリジアンご都合展開すぎるとか、言いたいことはいろいろありますが、もうこの際どうでもいいです。
レイ及びベンとダース・シディアスの対決を見られただけで私は満足しました。
以上、長々と書いてきましたが、「スター・ウォーズ エピソード9 スカイウォーカーの夜明け」の考察を終わりたいと思います。
以下は余談です。
今回、自分の仮説を考える上である疑問が浮かびました。
それは、「フォースによる生命の操作がダース・シディアスですらなし得なかったとなると、シミ・スカイウォーカーは本当にフォースによってアナキンを授かったのか?」ということです。
あくまで私の考えですが、今回の映画では「フォースだけでは新しい命を生み出すことは出来ない」という隠れた設定が明確になったと思っています。もしそれが真だとすれば、シミ・スカイウォーカーはどうやって子供を授かったのだろうか……。
人知の及ばない『フォースの意思』によってなのか、はたまた、誰にも明かされていない『真の父親』が存在するのか……。
妄想は尽きません。
(あくまで一個人の妄想であり、他人の意見を否定するものではありません。ご理解ください)
スター・ウォーズEP9、そのデュエルシーンを考察してみた。 草薙 健(タケル) @takerukusanagi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます