生死の際、独特のキャラクターたちによるゆるい掛け合い

ゲームが楽しすぎて死にかけている男が、薄れゆく意識の中で人生を振り返るお話。
主題自体は非常にゆるく、独特のテンポが楽しい対話劇で、肩の力を抜いて読めました。
特に『スーツ姿の男』のキャラクターが本当に愉快で、彼に振り回される主人公の姿が大変笑えます。
対話ベースのコメディ、という、ある種コントや漫才のような趣のコミカルさを、きっちり小説として魅力的に書き上げているところが好きです。掛け合いがベースであるにもかかわらず、でも演者の声や身振りを必要としない、文字を追わせることで面白みを感じさせる書き方。間の取り方というか読み手の意識のコントロールの仕方というか、いずれにせよそう簡単にできることではないと思います。
とにかく読んでいてただただ楽しい、大変愉快なお話でした。