元の世界のルーティーンを通して際立たせる異世界の空気感!

 たった一人、勤めていたコンビニ店ごと異世界に転移してしまった女性主人公サオリ。
 仕組みは分からないけれど、どうやらライフラインも発注システムも生きているらしい。
 でも、お店の外は魔物が跋扈する混沌とした未知の世界。
 たった一人で生き残れるの!? というのが序盤のストーリー。

 一番の見所は、コンビニの業務や、それに取り組む心構えがとてもリアルに書かれているところ。
 え、そこ? ストーリーと関係ないじゃん!
 ……と思われる方もいるかも知れませんが、この作品、わけの分からない状況に陥っても、普段通りのルーティーンをこなすことで、心細さや不安に押し潰されることなく平常心を保つ主人公が、非常にリアルに書かれています。
 そういったコンセプトが序盤でしっかり書かれているからこそ、回が進むにつれて徐々に広がっていく物語の中でも、一本芯の通った世界観が維持されているのだと思います。

 文章は、平易な単語と親しみ易い筆致で読む人を選びません。
かといって深みがないというわけではなく、高い構文能力と表現の幅の広さは保証します!
 敬体で書かれた地の文とサオリの口調に一体感があり、没入感もかなり高め!

 とりあえず、お口に合うかどうか確かめられる場合は第五話まで読んでみて下さい!
 筆者は最新話まで読み進めていますが、この作品の魅力は第五話に凝縮されていると思います。