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大谷先生は、丸い形をした(トリュフ)チョコレートを手にとって口の中に放り込むと、「うん。美味しい!」と(本物の子供みたいな)本当に美味しそうな顔をしてそう言った。
「よし。じゃあ、せっかく二人も部員がきてくれているんだから、みんなで部活動をしよう」という(おー、というように、初花と一緒に片手をあげながら)大谷先生の提案によって、鉢と初花は部員らしく、園芸部の部活動をすることになった。
そんな話の流れの中で、初花の話はそのまま、なんだか、あやふやなままで、この部屋の中から(あるいは世界から)消えてなくなってしまった。
鉢は初花の話がどんな話だったのか、結構、気になっていたのだけど、初花はもうその話を切り出すことはしなかったので、鉢のほうからも、その話題を初花にふることもしなかった。
二人は大谷先生と一緒に園芸部の所有している(小さな小屋のような形をした)ビニール小屋の中に移動をした。(そのビニール小屋の中に、園芸部が大切に育てている珍しい古い種はあった)
園芸部の部室からの移動中、鉢はずっと大谷先生と仲良く話をしている初花の制服姿の後ろ姿をぼんやりと見つめていた。(だけど初花が、鉢のほうを振り向くことは一度もなかった)
「椎名くんは比較的、よく部活動に出てくれるよね」
エプロンをつけたり、手袋をつけたりしながら、園芸活動の用意をしているときに大谷先生は鉢に言った。
「まあ、暇ですから」
完全装備をした鉢は、大谷先生にそう言った。
生意気な後輩 雨世界 @amesekai
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