第3話 春の温かさとアレルギー

2回連続でくしゃみをした。もう春かと、身をもって実感する。僕はかなりの花粉症で目も痒いしくしゃみばかり出る。目薬がないと生きていけない。僕とは逆で【 】は花粉症でもなかったし、アレルギーもひとつもなかった。心底羨ましい。くしゃみをする僕を見て【 】は笑った。

「花粉なんてほんとにあるの?」

「見てたらわかるだろ!誕生日に花粉症をプレゼントしてやるからな。来年には【 】もめでたく花粉症だな!」

「そんな怒んないでよ!」

楽しそうに、笑う。本当にプレゼントしてやりたかった。【 】の誕生日は多分、夏。それくらいしか思い出せなかった。

「いや〜それにしてもぽかぽかだね。」

「一生この季節でいいと思うよ。」

「そしたら私どうするの!」

「それは知らん。」

僕はその会話に笑いながら答えていた。【 】の言葉の意味は、前ならどういうことなのかわかっていたんだろうけれど、今は本当に分からない。文脈がつかめない。けれどどうしたって思い出せないからずっと放っている。

春には大した思い出はなかった。いつも通り過ごしていつも通りだった。それが日常でそれが幸せだった。全てが大切な思い出だけど、僕が覚えていられるような記憶は少ない。

時計を見るとやはり15分くらいしか経っていない。また目を閉じた。


「あのね、もう資格がないから。私にはさ。」

涼し気な風が流れて、僕の涙を乾かしていった。


「……っはぁ。」

くそ、またか。と内心うんざりする。夢の中とは違いずっと濡れている頬を拭う。横にはまだのんびりと好華が寝ていて、そこにいる存在に安心した。朝の7時。日曜日にしては起きるのが早すぎたかと後悔する。昨日はずっと晴れていて雲も少なかったのに外からはしとしとと雨の音がしている。ベットから出ようとすると腕をつかまれた。

「起きてたのか?」

「さっきだけどね。おはよう」

「今日はどうする?」

「泊まっていけばいいよ」

僕をこの家に閉じ込めるつもりなんだろうか?と面白くなる。

「なんなら一緒に住むか?」

少し攻めた言い方をしてみた。付き合って日が浅いことはないが、同棲するまでにはいたっていない。最近見る夢のせいで僕は忘れようと焦っているのかもしれない。

「それはダメ。« »くんに私の全てがバレるじゃん。」

「それのどこがダメなんだ?」

「不思議な方が魅力的でしょ?」

ふふっと笑う好華。少し距離を置かれたようなところが引っかかるが、よしとした。掴まれていた腕を引かれてベットに戻される。

懐かしい柔軟剤とシャンプーの香りがしたと思うと、また頭が痺れる。


「あったかいねえ。」

お互いの足をからませながら言ってくる【 】。

「【 】の足は冷たいけど?」

冷房をガンガンにして布団にくるまる。それでも体が冷たくなってる【 】は冷え性だったか?

「こんなことするの初めてだな。」

「……うん。初めてね。」


またなにか思い出した。冷房か。また夏だった。夢を見るたび、なにかを思い出す度に心が重くなっていく気がする。

「おーい。« »くん?」

「好華。」

「どうしたの?」

「今日は……やっぱり帰るよ。迷惑かけてるしね。」

「……そう?わかった。」

それらしい理由をつけて今日は自分の家で気持ちを落ち着かせることにした。元気の無い姿をずっとみせているわけにないかないから。

ゆっくり布団から出て洗面台に向かった。



「多分あの人、思い出してる。」

私は言う。

「……でも。」

「大丈夫だよ。もう夏も中盤だよ?終わるまでにできるだけ頑張るから。」

確信があるから。

「無理だよ。」

「心の準備はしててね。全部言うんでしょ?思い出してくれたら元に戻るんでしょ?」

「うん。そうだけど……分かった。じゃあね。ありがとう。」

プツッと電話を切った。私自身、こういうことに協力しているのに関して気は悪くない。お姉ちゃんには申し訳ないなって思うこともあるけど、でも仕方ない。体の関係も持っていないから大丈夫。私の心も大して変化がない。つくづくアセクシャル。珍しいと言われる私がこんな形で役に立つ時がくるなんて思ってなかったけど。多分向こうも私のこと好きじゃない。そんな顔をしている。気づいてないみたいだけど。

「はぁ……。」

ため息をついた。そろそろ私の心労にも自分の気持ちにも気づいて欲しいものだ。





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ここから先は私もどういう風に書いていこうか忘れてしまったので今のところ書かないかもしれません。気が向いたら書かせていただきます

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書きおえれなかった供養箱。気が向いたら書く @sssss_

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