第15話 情けない奴

「……あ、俺はコントロール良くねえからな。加佐屋先輩のようにはいかねえよ。神早にしたって、スピードあるし変化球も持ってる。敵わねえよ。……実は俺、セカンドにコンバートしようと思ってるんだ。って、心配すんなよ。高校に入ってポジションチェンジするなんてザラだからな。明日にでも監督に相談しようかな」

 耳を疑った。あんなにも楽しそうに夢を語っていた数秒前の彼が嘘のようだった。諦めるにしてもまだ俺たちは一年だ。あまりにも早過ぎる。俺は幻滅を通り越して怒りを覚えた。

「お、おい‼ 嘘だよな⁉ お前らしくないだろ‼ そこは『俺が正ピッチャーになる‼』って言うところだろ⁉ どうしたんだよ⁉」

「うるせえな……、仕方ねえんだって。どうにもならないことってのがあるんだよ。それよりもお前、さっきみたいな体たらくじゃ、二年でレギュラーなんて夢のまた夢だぞ。もっと練習しろ! あと、ポジション選びならライトにしろよ。あそこだけ二年の層が薄いからな。分かったな! ライトだぞ‼」

「今俺の話はどうでも良いだろ‼ っておい⁉」

 俺の気持ちを無視して言いたいことだけ言った前村は、俺の制止を振り切ってさっき出てきた115kmの部屋へ再度入り直した。俺はというと、こんな腑抜けとこれ以上一緒に居るのが嫌になり、未練が残るものの、バッセンを後にした。

 俺は前村のことを買い被っていたようだ。あんな根性無し、もうどうでもいい。ペダルを漕ぐ足に一層踏ん張りを利かせ、肩を左右に大きく揺らしながら尻を浮かせる立ち漕ぎで、急いで家を目指した。


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涙する太陽 暁の月 @akasaku

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