何ひとつ心安らぐところのない、徹底した胸糞系ホラー

母親に家庭内暴力を振るう引きこもりの男と、その左膝に現れた人面瘡のお話。
この死ぬほどドロドロした読後感。重いというか救いがないというか、とにかくポジティブな要素を徹底的に排した、この最初から最後までずっと後味が悪いところが最高です。
主人公の男からしてもう、まったく好感を持てる要素がない。ないのですけれど、でもそれにしたってストレートすぎる、あの人面瘡さんの罵倒マシンガンっぷり。お母さんはかわいそうなんですが、でもかわいそうなだけに余計に救いがない。
まさに〝嫌なもの〟のフルコースといった趣で、少しもほっと気持ちの安らぐところがない、それがこの作品の最大の特徴であり魅力だと思います。
特に好きなのは結末です。結局、なんだったのかわからない。わからないけれど、でも少なくとも「ただの妄想」なんかよりもよっぽどろくでもないもの、ということはわかる。〝正体がわからないからこその恐怖〟をきっちり残していく、素敵な幕切れだったと思います。