静かで上品な色香漂うバディものSF

悪魔を思わせる美貌を持った謎の男と、その相棒である主人公がふたりで事件解決に挑むお話。
SFです。いわゆるハードSFではなく(たぶん)、ある種のファンタジックなフィクションを核としながらも、きっちりSFの快感を提供してくれる作品。
細かく組み上げられた各種設定の魅力はもとより、それをきっちり理解させてこちらに咀嚼させてくれる、その『説明を面白みに変えてしまう筆致』の魔力がとんでもないことになってました。ずるい……こんなのカッコよくないわけがない……。
登場人物が好きです。特に主人公コンビの関係性というか、互いの位置関係のようなものが最高でした。
魅力と才能の塊のような慧に、彼と比べたら特別な存在ではなくとも、でもその欠落を埋めるような形で寄り添う相棒のカナエ。使命を私欲のために利用する、ある種の共犯関係のような仲。綺麗というかお洒落というか、この独特の繋がりからほのかに漂う、何か色香のようなものがたまらない作品でした。