潜憶士は対象の生物が持っている嫌な記憶を引き受ける仕事。報われない仕事。癒やしてくれるのは、無限の宇宙。その宇宙とは?皆さんもぜひ読んでみてください。
私の仕事は潜憶士せんおくし。潜憶士ってのは対象の生物が持っている記憶に入り込み、邪魔な記憶を消すのが仕事内容さ。誰にだって嫌な記憶はあるだろ、それをアタシら潜憶士が潜って取り除いてやるのさ。無限の宇宙、深い話でした!
人の記憶に入り込み、嫌な思い出だけを摘出する『潜憶士』。摘出した分だけ、自分の記憶に残される。損な役回り。でも、神様からさえも、見放される存在。どれだけ献身的に尽くしても、誰も認めてくれないそんな職業って、現代社会においても随分多くあるんじゃないですか?きっと、あなたも私も『潜憶士』。
電子的なガジェットで時代感を表現し、それからキャラの背景を書いているためすんなり読めました。まるで長編SFの序章のような感じ。この後、主人公には別の依頼が来て、運命的なパートナーと巡り会う……なんて妄想がすぐに広がりました。
この短いストーリーの中に驚くほどの情報量が仕込まれています。深淵にも似た、深い深い世界観が読めば読むほどに読者に突き刺さる。書いてある文字の多さが語りの全てでは無いことを教えてくれている気すらしてきます。良作です。