金の斧

ヨウゲツ ゾンビ

金の斧

ある日。


ドボンと、女神の目の前にスマホが落ちてきた。


――ええとコレは、iPhoneXテンってやつですかね?


女神はそこんところ予習済みであった。

最近の人間は歩きスマホをするからか、落とすのは大概たいがいスマホであり、そんなドボドボ落とされれば嫌でも覚えるというもの。

(あと「金のスマホじゃなくて最新機種を渡せや!」と息子から怒られたことも一因である)


女神は機種が合ってるか息子に確認し、スマホを3種類持って水面に顔を出した。


――あなたが落としたのはiPhoneXですか?11ですか?それともPro?



………。



また、ある日。


ドボンと、女神の目の前にスマホが落ちてきた。


――ああコレはiPhone7ですね。私も使ってるので流石にわかります。


女神はまた、スマホを3種類もって水面に顔を出そうとしたところ、人間の言葉が聞こえてきた。女神の耳は高性能なのである。


『スマホを落として正直に答えればiPhone3種類もらえるんだろ?いやお得すぎんだろw』


――あぁ、そういう人ですかぁ。コレはちょっと痛い目をみてもらわないといけませんね。


女神は水底へと戻り、姿を現すことはなかった。



………。



またある日。


ドボンと、女神の目の前に人間が落ちてきた。


――ああこれは近所の男子高校生ですね。うん?……え?



『なあ女神さま』


『物じゃなくて、人が落ちてきたら、どうなるんだ?』


『スマホを落としたら上位機種がくる。なら、人間を落としたらその上位の人間をくれるんじゃないか?』


『私が落としたのはこの私です。なあ正直だろ?くれよ。金の俺って奴を。会話が上手で成績優秀であとぉ……なんかすげぇやつをさ』


『いや、くれなくてもいいや。こんなよこしまな俺をどこかに連れて行ってくれよ』


『どこでもいいから。天国でも地獄でもいいから』

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