レッツ、パーリィナイト!!
今夜はパーティである!
祝賀会である!
宴会なんである!
庭にはレンガを並べた
周囲にはデビット、フォクシー、ウラギール、シャルロット、そしてもちろんマリオンがいる。
これから俺たちは鉄板で肉や海産物、野菜なんかをバンバン焼いて、バーベキューをするつもりなのだ。
酒は近所の『銀の三角亭』から取り寄せて、エールにワインにブランデーが飲み放題……こんなのなんか、思いっきり陽キャみたいだよねっ!?
ちなみに国王も明日の夜、城で慰労を兼ねた晩餐会を開いてくれると言っていた。本音を言えば、あんまり行きたくないんだけど……立場上、断れないのが辛いところである。ニセ陽キャには、なかなかキっツいイベントだ。
ともかくと俺は気を取り直し、皆に大声で言う。
「みんな! 今日は、好き放題に飲んで食ってくれ! 酔いつぶれても心配ない……昼の間にマリオンと一緒にシーツを洗って、ベッドを整えて、空気を入れ替えて、全員が泊まれる部屋を用意してあるんだ! それじゃ……レッツ、パーリィナァーイトッ!」
一斉に歓声が上がった。今夜は、とことん騒ぐのだ!
ウスダージャと胡麻油、
「フォクシー、楽しんでる?」
フォクシーは嬉しそうな顔で尻尾を振りながら、俺に笑い返す。
「はい! あたし、ウスダージャってあんまり好きじゃなかったんですけど……これは香ばしくって、とても美味しいです!」
「遠慮せず、どんどん食べてくれよ。俺、フォクシーには感謝してんだ」
フォクシー……君がお守りをくれなかったら、俺は死んでたよ。
ほんとありがとう、君は命の恩人だぜ!
そんな想いでフォクシーをじーっと見つめていると、フォクシーは目にハートを浮かべながら呟いた。
「……なんだか夢みたいです。こんな広いお庭で、こんなに美味しいものを食べられるなんて……っ! そして、目の前にはジュータさん。ああ、ロマンチックが止まらないわ! 今夜のジュータさん、渋くてとっても素敵……カッコいいですぅ!」
い、いやー、照れるなぁー?
俺ってば、イケメン(※ただし獣人相手に限る)だからねえー??
俺が片手で前髪をかき上げてニヒルに笑いかけると、フォクシーは悩ましげなため息を吐いて、尻尾の先を
と、聞き覚えのある声が響く。
「あらまぁーっ!? 可愛い女の子ばっかり集まってるじゃないのー!」
なんと、やってきたのはダリアである。
俺は、あからさまに不愉快な顔を見せる。
「えー? 呼んでないんだけど……なんで来るの?」
ダリアは杖で、地面に魔方陣を描く。するとそこから、酒樽やら瓶やらがポコポコと飛び出てきた。
「『銀の三角亭』から、追加のお酒を届けに来てあげたのよぉ。ついでに、これも飲ませてあげるぅ……だから、アタシも宴会に混ぜてよぉ!」
言いつつ、真っ黒な液体の詰まった瓶を手に取り、栓を抜いた。
ポン! コルクが飛んで、シュワシュワと泡が沸く……コーラだーっ!
俺とマリオンは、さっそくコーラとブランデーを混ぜてカクテルにして、大喜びで飲み始めた。
他の皆にも試飲してもらったが、シャルロットは大喜びで、フォクシーは微妙な顔をして、デビットも首を傾げていた。ウラギールは、「不気味だから」と飲むのを拒否した。
宴会も2時間ほど経過した所で、マリオンがフォクシーと一緒に厨房から出てくる。手には、茹で上げた麺や大量のキャベツを載せた皿を持っている。
そして、俺に声を掛けた。
「ジュータ、材料の用意ができたぞ!」
その声と共に、鉄板の上にキャベツと細切れ肉、そして茹で上げた麺がドサッと盛られる。
マリオンがオタマで具材や麺をかき混ぜて、ジュージューと焼ける音が派手に鳴る。
皆、なにが起こるのかと興味津々で鉄板の前へと集まりだした……マリオンが、俺に目配せする。
俺は、懐から小瓶を取り出した。
「ペヤング……じゃないけれどっ! 用意できる材料で、できるだけ再現してみたぞ! みんな、食ってくれ! これが、俺の故郷の料理だぁーっ!」
俺が鉄板の上に小瓶の中身をぶちまけると、ソースの焦げるたまらない香りが辺り一面に立ち込める……期待に満ちたざわめきが起こった。
この香ばしさの前では、誰もがソワソワを抑えきれない。ソース製作者のダリアでさえも、生唾を飲み込んで鉄板の上から目が離せないようだった。
俺とマリオンは、目を合わせてニンマリ笑う。
ふっふっふ。こりゃ、ちょっとした優越感だなぁ!
それから俺は空になった小瓶を、庭の暗がりに向かって思いっきり投げ捨てた。
ダリアの奴め……「次からは、小瓶ひとつで金貨1枚よ」なんてほざきやがって! 魔女のくせに、ガメつい奴だぜ!
だが今夜は、みんなに焼きそばを味わってもらうと決めたのだ、ケチケチしない。
もっともマリオンが言うには、金貨1枚はぼったくりにしても、使われてる各種の香辛料を見ると、この世界の価値で考えれば銀貨数枚の値は付くらしい。本物のウスターシャが後世に伝わらなかったのは、きっと材料が高価すぎて、酒場のマスターでは再現できなかったからに違いない。
俺とマリオンは出来上がった焼きそばを皿に載せ、マヨネーズを掛けて生姜のピクルスを添えて、待ちきれない様子の皆に配っていく。
誰もが焼きそばを一口食べては驚愕を浮かべ、感動して夢中になった。その食べっぷりは傍から見ていても、本当に気持ちのいいものだった。
大量にあった焼きそばは、あっという間になくなってしまう。
俺とマリオンも、慌てて自分の分を確保する。久しぶりのソース焼きそばは、めっちゃくちゃウマくて懐かしかったのだけれど……なんだか胸がいっぱいになってしまって、あまり食べられなかった。
その後、シャルロットはあんまり酒が強くないのにダリアにブランデーなんて飲まされたせいで、木の枝を振り回して「オーク共めぇ……くぅ、ころへえ!」とか言い始める。きっと彼女の目には、自分を取り囲むオークの群れでも映ってるのだろう。……早々に剣を取り上げて棒っきれを渡したウラギールは、さすがである。
ダリアは、そんなシャルロットを嬉しそうに見つめてる。なんだか「計画通り」みたいな目をしてるのが気に入らない……こいつ、絶対うちに泊めねえぞっ!
デビットがシャルロットを指差してゲラゲラ笑う。オークのセリフのつもりなのか、時折「生意気な女騎士だブー、犯してやるから覚悟するブー!」とか叫んでる。へえ、オークって、そんな喋り方すんのかよ?
ウラギールは、マリオンとなにやら真剣に話していた。時々、「地下迷宮のアンデッドの種類は」とか「魔法のトラップは」なんて声が聞こえるので、国防上の情報でも教えてるのかもしれない。
フォクシーは酔って俺にしなだれかかる。ピコピコ動く獣耳が頬に当たり、それをくすぐったく感じつつも、グニグニと押し付けられる獣娘おっぱいに、俺は全神経を集中させた。
その後も、マリオンの歌で盛り上がったり、デビットが好事家のためにマリオンの絵を売り出そうと計画したり、サンプルを見てダリアが興味を示したり、そのダリアがシャルロットを暗がりで襲おうとして俺らに袋叩きにされたり……そんなこんなで宴会も佳境を過ぎて、誰も彼もが酔いが回り、ウトウトし始めるものまで現れた。
そろそろ宴もたけなわと言った所で、頬を染めたマリオンが俺の袖を引っ張る。
「なあ、ジュータ……こっち来てよ!」
そして、皆の目を避けるように暗がりに行くと、聞き取れないほど小さな声で何かを呟く。
「ん? どしたの、マリオン?」
言いたい事でもあるのかと、俺は顔を近づける。
すると突然、顎をクイっと掴まれて……キスされた。
「マ、マリオン……!?」
薄闇の中、酔ったマリオンは楽しそうにクスクス笑う。
「うふふ! こんなに楽しい夜、オレは忘れたくない! ……だからお前にこうして、記憶を許可してもらわないとな」
俺は、びっくりしてマリオンに言う。
「えーっ! それはもう、宴会前にやっただろ!? 酔って忘れないようにって、とっくにキスしたじゃないか!? 刻印だって反応してたろ!」
するとマリオンは、小悪魔めいた笑みを浮かべて首を傾げる。
「くふふふ……うーん、そうだっけー? オレ、忘れちゃったよぉ!」
それから、俺に抱きついた。
……俺の身体に、小さくて柔らかな温もりが密着する。
マリオンが、静かな声で囁いた。
「なあ、ジュータ……少しだけ、こうさせてくれ。……オレにお前を、感じさせてくれよ」
俺はマリオンの頭を胸に抱き、問いかける。
「マリオン。……今、幸せかい?」
マリオンは、
「ああ! オレ、とっても幸せだよ!」
マリオンが幸せを感じてくれてる……たったそれだけの事が、俺にも信じられないほど幸せだった。
ひとりぼっちの広い屋敷が、今は大切な仲間たちで一杯だ。俺の新しい人生が、ようやく動き出したのだと実感した。
第一部 完
エロゲ好きだったキモオタデブの俺が、異世界で幼女のおっさんとイチャラブする! 森月真冬 @mafuyu129
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